カラフルなバッジで
宣伝に躍起の銀行員たち

 最新鋭の産廃処理設備を拝めると期待して乗っていたランボルギーニが、帰り道では何の変哲もない、古びた小型トラックにしか見えなかった。ガレージに車を納めたとき、ドーベルマンたちは餌である絞めた鶏に群がりむさぼりついていた。おかげで、私はかみつかれそうにならずに済んだ。社長は、金網フェンスを開けて見送ってくれた。

「またそのうち来いよ。今度はカウンタックに乗せてやるよ。3台あるんだ」

 生返事で礼を言い、会社を後にした。

 誤解を招かないように言えば、当時の産廃処理業者が全てこんな仕事をしていたわけではない。だが、環境問題がニュースになると、決まってそのランボルギーニの社長の言葉を思い出すのだ。

 そして、今。

 この会社があった市の「一般廃棄物収集運搬業許可業者一覧」を確認した。その産廃業者は見つからなかった。2008年に「廃棄物処理法」が改正され、マニフェストの虚偽記載等に関する罰則が強化され、2010年の改正では最終処分場の所在地を記録・保存することも厳格化された。その後も、この法律は何度も改正が行われた。そういった経緯で、許認可が下りず廃業したか。もしくは会社名を変えたのか。

 現在、各銀行はSDGs達成への取り組みについてのアピールに躍起となっている。全社員向けに研修も行っている。多忙な業務の合間に、数十分の動画コンテンツを斜めに見て、簡単なテストに答えるといったものだ。受講の後、こんな声が聞こえてくる。

書影『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ)『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ)
目黒冬弥 著

「サステナブルと言われても…私の今の仕事に何の役に立つのか」

「あのカラフルなバッジ着けてる偉い人をよく見かけますが、本当に毎日こんなことばかり考えてるのかしら」

 彼らは、SDGsのバッジを外した方がいいのではないか。私も会社から支給されたが、着けたことはない。周囲の上司たちは着けているが、全くサステナブルな発想も主張もない。赤い羽根共同募金の羽根ぐらいの感覚ならば、いっそのことやめた方がいい。バッジは行員へ一斉に配られたものであり、その人の主義主張ではない。全く意味はないし、しょせん会社の宣伝にしかならない。

 私は今日も懸命に勤務している。つらいこともうれしいこともあった。この銀行には感謝している。

(現役行員 目黒冬弥)