顧客にリスクを強いるのに、自らはリスクを取らない証券会社

「デジタル革命によって、証券業界の営業現場に人的資源は不要になる」

 金融とIT技術を融合させた「フィンテック革命」の信奉者は、対面証券の危機を予想し、「証券会社は大規模なリストラが避けられない」とあおり立てるメディアもあるが、それ以前に、証券業界の水面下では「営業現場のメルトダウン」という強烈な危機が静かに進展していたのだ。はたして、その真相はどこにあるのか。そして、次の時代を迎えた時、証券会社という伝統的な枠組みは存続しているのか。

 米国ではさまざまな証券会社が新たな時代に適応して勝ち残るべく、経営改革に走り続けている。それは、自らの既存ビジネスを捨て去ることも辞さない壮絶な戦いであり、そこからは誰も予想できなかったような進化の足取りが生まれてきている。

 翻って、わが国の証券業界はどうだろう。

 危機を察知した一部の革新的な人たちを除いては、まだまだ旧態依然としたビジネスと既得権益にしがみつき、自らを変えていこうという意欲が薄いようにみえる。

 証券業は「リスクテイクのビジネス」といわれる。確かに、証券会社は顧客に「投資ではリスクを取らないと、リターンは得られない」と説いている。ところが、そんな証券会社自身や社員は過去の世界に安住し、最もリスクを取らない生き方を続けてきている。変化こそ根源である証券ビジネスの中で最も変化することを忌避し続け、惰性の利益にしがみ付いてきた。そんな惰眠の日々を貪ってきたのが証券業界だった。