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あなたの会社に、やたらと敵をつくる言い方をするリーダーはいないだろうか? そのリーダーに人を巻き込んで物事を達成する力はない。そんなリーダーを反面教師に、無用に敵をつくることなく、「あのリーダーのために、手伝ってあげたい」と思わせる伝え方とは? 3万人のリーダー育成を通じて抽出した、賢いリーダーに共通する「得する伝え方」を紹介する。
「この人の仕事を手伝ってあげたい」と思わせるには
リーダーAさんは営業推進部のEさんに、新商品の案内のために、かなり時間を要するデータを1週間で作成してもらいました。1週間のうちの大半をこの仕事に費やしてもらったので、Eさんには相当の負担になっていたでしょう。残業も発生してしまっていました。クオリティも高く、「ありがとう。この資料なら問題ない」とAさんは伝えます。
しかし、Eさんは何だかムッとしています。それもそのはず、Aさんは営業推進部に対し、自分の部下と同じように、資料の出来を評価しているからです。これでは、「今後は、この人の仕事を引き受けるのは止めよう」と思われても仕方がありません。Aさんは、Eさんに感謝の意だけを伝えるのがいいでしょう。
ただし、もっといい手があります。それは、「Eさんの作ってくれたデータ資料、お客様が『非常に見やすい』と喜んでくれたよ」と、その後の反応を伝えるのです。
自分が少しでも携わった仕事は、その後どうなったかが気になるものです。今回のEさんも、後工程で自分のアウトプットがどのように役に立ったのか気になったはずです。
働く人は誰でも、仕事に対する「手触り感」を求めています。つまりは、自分の働きが何に貢献したのかがわかる「血の通ったフィードバック」です。
営業やコンサルなど、クライアントと直接仕事をする職種であれば、フィードバックが得られますが、営業事務や人事など、直接クライアントと関わりのないバックオフィス業務の人などは得られません。ですから、こうしたフィードバックは有難いものなのです。「またこの人のために仕事をしよう」と思ってもらえるはずです。
なお、コンサルティングをしていたある企業で「営業事務の人に人気がある人は誰ですか?」という質問をしたところ、Bさんという方の名前が上がりました。Bさんはどんな方かというと、必ずフィードバックがある方だったそうです。
仕事でなくとも、お土産を渡したあと、「美味しかったです」としか言わない人と、「ありがとうございました。あれから社内で争奪戦のジャンケンが始まりましたよ(笑)。美味しくて最高でした」と言う人、どちらに好感を持つかは言うまでもないでしょう。
「持って行った資料を、お客様はこの点がいいと言っていた」
「早い対応だったので、ライバル企業に差をつけることができた」
「あの資料がわかりやすくて、契約につながりました」
どんな内容でも構いません。後工程の反応をフィードバックすることは、「自分の仕事が役に立っているのだな」と承認欲求の充足にもつながり効果的です。
他部門の言い分を認めるところから始めよう
賢いリーダーは、先ほどのように協力態勢を整えますが、愚かなリーダーは対立を深めます。
システム販売の会社で営業マネジャーを務めるAさんは、営業同行について技術部のマネジャーEさんと意見が対立しました。会議で、技術部から次のような苦情が出たのです。
「受注確度の低いクライアントにまで同行しなきゃいけませんか?」
「同行前に聞いた情報とクライアントから聞く情報に食い違いが多い」
「営業メンバーにもシステムの基本を学んでほしい」
今後、営業部は技術部に同行を依頼するルールを定めることになりました。腹が立ったAさんは、デスクに戻ってこんなことをメンバーに話したようです。「クライアントが急に技術部の同行を望むのは、仕方がない。臨機応変に頼むよ。Eさんは頭が硬い」とデスクに戻ってメンバーたちに愚痴を言います。
リーダーが表立って他部門批判をするのは最悪です。第三者を介して、ほぼ確実に相手に伝わります。しかも尾ひれまでついて。
もちろん、面と向かって批判をされれば、ムッとする気持ちもわかります。しかし、その感情をリーダーが表に出せば、部下にまで伝わってしまいます。
始めは他部門のリーダー同士で勃発したはずの対立が、いつの間にかメンバーを巻き込んだ部門同士の対立へと発展する恐れもあるのです。どちらも損するだけで、誰も得しないでしょう。
他部門には他部門の言い分があります。もちろん、それは自部門も同様です。つまり、お互い様なのです。
ですから、リーダーに必要なのは、まず相手の主張を認めることでしょう。
「Eさんの言いたいこともわかる。こちらとは立場が違うからな」
本心では納得していないニュアンスではありますが、それでも構いません。悪口を言うよりは何万倍もマシです。
さて、もしここでAさんが器の大きいリーダーなら、こう答えるでしょう。
「Eさんの言いたいこともわかる。Eさんの指摘は、冷静に振り返れば納得できることが多いよ。その場では、『えっ』ってなるけどね。鋭いし、勉強になる」
このように、あえてEさんがいないところでほめるのです。
おそらく、AさんとEさんは、根本的なところで馬が合わないのでしょう。合わない人同士、お互いに見えないところで、「自分のことを悪く言っているかもしれない」と疑心暗鬼に陥っているかもしれません。
しかし、間接的にEさんにAさんがほめていることが伝われば、EさんはAさんへの不安がなくなります。つまり、心理的安全性が担保されるのです。これは、相手の目の前で称賛するよりも効果的です。
ちょっと合わないと感じる人と良好な人間関係を築くために、「相手がいないところで、ほめる」ことを試してみてください。完全にはわかり合えないまでも、わかり合えるよう距離を縮める努力をするのも、リーダーの仕事です。







