ほとんどの人が知らない「秘すれば花」の本当の意味、世阿弥に学ぶビジネスの極意世阿弥が生きていたのは600年以上前の室町時代。芸術家の立場で、なぜここまで経営の神髄に触れることができたのか Photo:PIXTA

能を大成させた世阿弥のことはほとんどの人が知っているかと思いますが、世阿弥の著書『風姿花伝』となると意外と知っている方は少ないのではないでしょうか。著者で経済コラムニストの大江英樹さんは世阿弥の著書にはビジネスパーソンこそ読むべきエッセンスがあるといいます。そこで今回は新刊『ビジネスの極意は世阿弥が教えてくれた』(青春出版社刊)からなぜ世阿弥の書がビジネス的に優れているかについて抜粋して紹介します。

ドラッカーの顧客志向を先取り!?『風姿花伝』に見る現代の経営理論

 これまでのビジネスの経験から、世阿弥の言葉に「まさに我が意を得たり」と感じることがたくさんありました。また、ドラッカーやポーターといった世界的に著名な経営学者の書物も読んできましたが、世阿弥の書を読んでみると、そうした本とまったく同じ意味のことが書かれていて驚きを禁じ得ませんでした。なにしろ世阿弥が生きていたのは600年以上前の室町時代です。芸術家の立場で、なぜここまで経営の神髄に触れることができたのでしょうか。

 たとえば、“経営の神様”と呼ばれているP・F・ドラッカー。名著と言われる『マネジメント』には、「企業の目的は顧客の創造である。したがって企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションであり、それだけが成果をもたらす』とあります。

 世阿弥の根本にある理念がマーケティングの重視と絶え間ないイノベーションなのです。