ダイハツのロゴPhoto:JIJI

ダイハツ工業の不正でトヨタ自動車の豊田章男会長も謝罪する事態に。いったい何が不正の温床になったというのか。製造業やサプライチェーンに長年、関わる者として、「不正の起こりやすい組織」「不正が起きる時の問題点」について考える。(未来調達研究所 坂口孝則)

ダイハツで二度の不正発覚
親会社トヨタも謝罪の事態に

 ダイハツ工業が2023年4月末、車両の認証申請における不正があったと公表した。側面衝突試験において、「前席ドア内張り部品の内部に不正な加工を行っており、法規に定められた側面衝突試験の手順・方法に違反があった」と認めた。

 対象はタイ、マレーシアなど東南アジア向け車種であり、販売実績は9万台弱。これを受けてダイハツの奥平総一郎社長が会見で謝罪するとともに、親会社のトヨタ自動車の豊田章男会長と佐藤恒治社長も別に緊急会見を行った。ダイハツの不正の対象車種の大半が、トヨタブランドのOEM(相手先ブランドによる生産)車だったからだ。

 豊田会長は「ダイハツだけでなくトヨタの問題でもある」「グループ全体で、個社の社内風土を変えるまでに至らなかった」などと謝罪や反省の言葉を述べた。

 それから1カ月もたたない5月19日、今度は新たに、国内で販売する2車種でも不正があったとダイハツは発表した。本来は、左右の車両側面を衝突させ安全性能を調査すべきところ、片方の衝突試験結果をもって逆側を代替していた。「助手席側(左)は立ち会いのもと試験を実施しました。運転者席側は右側の社内試験データを提出すべきところ、左側のデータを提出していました」と同社。

 その2車種とは、ダイハツの人気車種ロッキーと、トヨタにOEM供給しているライズのハイブリッド仕様車。短い期間に二度も、ダイハツとトヨタの両ブランドを毀損する事態が発覚したわけだ。

 ダイハツは、「この度の不正は、車の安全に関わる領域での不正であり、社会的に許されるものではない」「経営マネジメントが現場に寄り添えず、法令順守や健全な企業風土の醸成がおろそかになる中で、正しいクルマつくりを見失い、不正行為を発生させた」「不正行為をせざるを得なくなった背景・環境・真因を徹底的に究明、改善・再発防止に取り組み、膿(うみ)を出し切る」などとコメントしている。

「膿を出し切る」とは、なかなか強い表現のように筆者は感じた。いったい何が不正の温床になったというのか。製造業やサプライチェーンに長年、関わる者として、「不正の起こりやすい組織」「不正が起きる時の問題点」について、考えてみたい。