小さな会社の社長は、自分の好きなように自由に経営ができます。それはつまり、すべての責任は社長自身が背負うことを物語っています。すべての経営的な判断は社長が全責任をもつべきであり、認知していなかったとか、部下が勝手に判断してやったとか、そんな言い逃れは許されないのです。これをデメリットと取る人もいるかもしれませんが、私はこれも小さな組織だからこそのメリットと感じています。

 会社経営に関わるすべてのことが自分の責任であるということは、言い訳がいっさいできないということです。目の前に立ちはだかる課題にどうやって対処していくべきか、問答無用でその一点だけに集中することができるのです。そして迅速な対応が会社の評価につながります。すべての責任を背負うことで、自分の判断や一挙手一投足が会社の今後を左右するのです。

数字では勝てない大企業に
5つの理念とニッチ市場で勝負

 大きな会社は自社をアピールするとき、年間売上が何千億円だとか、数字で圧倒できます。数字ほど分かりやすいものはなく、それが顧客の信頼につながり、安定した雇用にもつながります。

 拡大しない経営においては、数字では大企業には対抗できません。ではどこで差をつけるのかといえば、会社の芯にある部分、つまり理念で勝負することになります。創業時に抱いたビジョン、それをとことんやり抜くための原則となる理念を打ち立てることが重要です。

 私の会社では、次のような理念を立てています。

 私たちは、物真似をしない独自の商品を創造しなければなりません。

 その商品は、使う人にとって優しくなければなりません。

 その商品は、継続して進化できるものでなければなりません。

 その商品は、適正な利益をもたらす源泉でなければなりません。

 この理念に基づいて、小さな組織ならではのスピード感で新しい商品を開発し続けることを心掛けています。

 理念が社内に浸透していれば、全社員が理念に基づいて行動してくれます。仕事のなかで迷いが生じたとき、商品に込められている思いを見失ってしまったとき、理念を思い返せば、自ずと取るべき行動や選択が見えてくるものです。

 理念に基づいた行動が徹底されていれば、自然と社外にもその理念は浸透していきます。私の会社の場合、あそこは面白い商品を持ってくる会社だと認識されています。すると、社員が顧客のところへ訪問すると、今日はどんなユニークな商品を見せてくれるのだろうという期待感をもって接してくれるのです。