このように文書作成能力に優れたChatGPTは、特に行政分野での期待が大きい。神奈川県横須賀市の活用実証では、8割以上の職員が「仕事の効率が向上する」、5割以上が「従来では得られなかったアイデアや知識を得られた」と回答し、今後の利用意向も8割近くに達している。

 一方で雇用喪失についての懸念も表明されている。米国では俳優や脚本家の組合がストライキを決行する事態となった。ニュースキャスターやクリエーターたちも戦々恐々だ。

 米ゴールドマン・サックスのレポートによれば、全世界で仕事の18%がAIによって自動化されるという。また、ホワイトカラーが多い日本を含む先進国では24~25%に跳ね上がる。管理・事務の支援業務などが最大のターゲットだ。

 一方、同レポートではテクノロジーによって新たな仕事が生まれる可能性も示唆している。米経済学者のデイヴィッド・オートーとその共著者による研究によれば、現在の6割の労働者は1940年にはなかった仕事に就いている。

 生成AIのようなイノベーションには、短期的には雇用機会を奪い、長期的には新たな雇用機会を創出するタイムラグが存在するといえるかもしれない。この前提を基に考えると、今後の先進国の課題は、イノベーションを持続化させるとともに、新たな仕事を創造して失業者を極力減らせるかどうかに焦点が移るだろう。

(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)