時間がかかりそうなサムスン電子の業績改善

 それでは、サムスン電子の業績悪化が底を打つのはいつ頃だろうか? 残念ながら、本格的な改善に転じるには時間がかかりそうだ。それに伴い、韓国経済の先行き不安定感も高まりやすくなるだろう。

 韓国経済の特徴として、サムスン電子、SKハイニックスに代表されるメモリ半導体産業は成長に大きな役割を果たした。両社とも韓国国内で生産した半導体を中国などに輸出してきた。輸出に占める半導体の割合は2割程度に上昇し、韓国の輸出依存度も高まった。

 しかし、世界の半導体産業の構造は急速に変化し始めている。大きな変化として、AIへの期待が大きく膨らんだ。米国ではエヌビディアなどがAI利用に欠かせないチップの設計開発体制を強化している。台湾TSMCはその製造を引き受け、ファウンドリのシェアを増やした。対照的に、汎用型のチップ製造を手がけた米インテルは、サムスン電子と同じく業績が悪化している。

 さらに重要なのが、主要先進国の産業政策の修正だ。米国、わが国、EUは、経済安全保障体制を強化するため半導体の自国生産を増やそうと、補助金政策などを強化した。

 一例として、米アリゾナ州ではTSMCが工場建設の拡充を計画している。補助金の支給条件に関する調整が必要な部分もあるが、計画では26年に回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)のロジック半導体の量産が始まる予定だ。そして、わが国の熊本県でもTSMCは工場を建設している。また、ドイツ政府もTSMCの工場を誘致しようと補助金を支給するもようだ。

 日米欧、いずれの国と地域においても、サムスン電子はTSMCに先行を許しているように見える。半導体供給拠点が東アジアから日米欧に分散し始めている状況下、韓国国内でサムスン電子が製品を生産し、輸出することで業績を立て直すのは難しくなるかもしれない。となると、韓国経済にも不透明感が増すことになる。