経済産業省と環境省は
風通しが良く社員の士気が高い
ここからは、国の中枢を担う1府11省(内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省)を行政機構図順にピックアップし、国家公務員の働き方を分析していく。
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1府11省の総合評価を、23年7月時点の官公庁業界平均の総合評価で比べた際、上回ったのは経済産業省(3.52)、財務省(3.17)、環境省(3.16)、防衛省(3.11)の4省のみだった。
特徴的なのは、経済産業省と環境省の「風通しの良さ」と「社員の士気」の高さだ。「風通しの良さ」に関しては11省中8省が2点台という中、両省は4点超えという高い結果となった。また「社員の士気」に関しては、両省のみ3点を超えた。
では、経済産業省や環境省にどのような社員クチコミ(原文ママ)が挙げられているかを見てみよう。
「若手を育てようという文化があるので、社会人としての基礎力はかなり鍛えられる。文章の書き方、根回しのコツ、論理的思考力などは徹底的に教わったので、これは霞ヶ関以外の職場でも財産になると思う」(総合職、女性、経済産業省)
「役職が下の者でも、幹部と顔の見える関係で議論できる社風がある。新しいこと、前例のないことをやろうとする社風もある。また、優しい人が多いと思う」(事務、男性、環境省)
以上の通り、若手の成長を歓迎するフラットな文化、霞が関以外でも通用しそうなスキル、自省庁以外の交流やつながりといった要素を挙げる声があった。人事や評価制度に関する改革は全国家公務員にとって共通課題であり、国家主体の改善が求められる一方で、ソフト面の改善も併せて取り組むことで、提言書で掲げられた「士気旺盛に就業できる環境」の実現につながると言えるだろう。
一方で、「人材の長期育成」「人事評価の適正感」「待遇面の満足度」のスコア、いわゆる人事・評価制度といった内容に関する評価は1府11省のどこも3点を超えず共通課題であると言える。それに関する社員クチコミ(原文ママ)を見てみよう。
「とにかく年功序列である。細かい資料まで上に見せて直す必要があり、深夜まで対応が及ぶこともしばしばある」(事務職、男性)
「国会対応などの雑務に忙殺され本命業務が滞ったり、形骸化した文書の書き方などで決裁を差し止められ無駄な業務が多いです。(自分の所属する省では)紙文化が根強く、打ち合わせをする際にも他省庁と比べて電子化しているものが少ない」(係員、女性)
「どこの公務員も同じだが、どれだけ頑張ってもあまり給与は変わらず、さぼればさぼるほど効率的に給与がもらえるので、言わば職員の気概やモラルだけで成り立っている。士気が高い職員に仕事が集中するため、優秀な者ほど失望して辞めていく、という悪循環となっている」(係長、男性)
クチコミを見ると、国会対応や紙文化・独自のルールなどを理由とした煩雑かつ膨大な業務の多さに関する声は当然ある。加えて、年功序列を指摘する声や各府省ともに人事・評価制度は共通であるがゆえに「優秀な人・士気がある人ほどしわ寄せがゆく」といった声も散見された。
国家や国民のためという使命感を持って入省したからこそ、膨大な業務量をこなしてもそれが人事制度や評価制度の面で反映されにくく、結果的に報われない徒労感に陥っている様子が、各府省問わず散見された。