I型の1つの究極系と言われた弁護士や会計士ですら、もはや安泰ではない。私は、日本トップ規模のグローバル法律事務所の変革支援に携わったこともある。かつて弁護士は資格・規制産業でありその中に入るのは容易ではなかった。しかし、規制が緩和され大幅に参入、つまり弁護士数が増えた途端、かつては高年収で有名だった弁護士の給与は急激に二極化した。通常の法務レビューができる程度のスキルはもはや専門性とは呼べず、市場価値が下がってきたのだ。

書影『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング)『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング)
徳谷智史 著

 一方、英語もできて、M&Aや事業再編にも長けている、法務観点から企業経営を支援できるような「T型」「H型」の弁護士は、極めて高い年収を維持している。

 I型を極めて突き抜ける方法もあるが、よくも悪くも、「特定領域のエキスパートプレイヤー」である以上、組織の方向性や上長・経営陣の意思決定などによる外部環境の変化に弱い、またその領域の市場ニーズそのものが縮小すると身動きがとりにくくなることだけは、念頭に置いておいてほしい。

 まとめると、ステップとしては、まずIを深めつつ(実際は、同時に幅も広がっていくケースも多いが)、一人前、つまり「市場から価値を認められるレベル」になったら徐々にT型に移行しつつ、次第にH型に進んでいくのが王道だ。