ブリッジ型は、発展すると他者のブリッジも束ねられるようになっていく。ビジネスは最終的にはチーム戦だ。だからこそ、自身が複数の専門スキルを持つブリッジ型でありながら、社内のH型人材やブリッジ型人材を束ね、社外の人材であればアライアンスを組み、(ときには採用もして)マネジメントできる人材はさらに希少価値が高くなる。

 おそらく多くの読者が、CHROの例を「自分とはほど遠い人だ」と思われたことだろう。ただ、今ブリッジ型人材として活躍される数々の方々も、最初からそんな人材だったわけではまったくない。

 むしろ、ご本人たちは「どこにでもいる普通の社会人だった」、それどころか「能力で言えば、新卒時はまわりにもっと優秀な人がたくさんいた」と口をそろえるのだ。ただ、時間が経つにつれて、経験や先を見据えた選択がグッドスパイラルをつくり、気づけば大きく差が広がっていたという。だからこそ、今だけでなく、先を見据えたキャリアの選択が重要だ。

どの類型から、どの順番で行くべきか

 さて、それぞれの類型についてイメージをつかんでもらったところで、次はそのステップをどう歩んでいくかだ。よく疑問の声として上がるのは、「どの類型からどの順番で行くべきなのか」。そして「専門性をどこまで高めたら次に行くべきか」だ。順に論じていこう。

 複数の専門領域を持つ人材の価値が高まると聞くと、すぐにいろんなものに手を出したくなるかもしれない。実際、希少性をつくるには、1つの「深さ」に加えて、複数の「掛け算」が有効だ。

 ただし、注意すべきことがある。「1に満たないものを掛け算しても、逆に小さくなってしまう」点だ。1人前のスキルを仮に1とした場合、半人前の0.5に違う0.5を掛けると0.25にしかならない。たとえば、現場での接客・サービスを数カ月かじる程度に経験し、大きな成果は出さずに転職、次いで、営業職でルートセールスを経験したが、これも数カ月で転職……といったケースだ。このように、一定のレベルの価値発揮、言うなれば「1人前」になる前に、やたらに他の領域に手を出してしまうと、Tの深さが得られない。いや、そもそもIにもなれない。