「言いたいことがあるのに、言葉がパッと出てこない」「話してるうちに、何が言いたいか見失う」
言語化に関するあらゆる悩みを、著書累計180万部を超える言語化のプロが一気に解決する1冊、『すごい言語化 「伝わる言葉」が一瞬でみつかる方法』が発売された。著者は、言語化コンサルタントであり、自身も60冊以上のビジネス書を出版してきた作家・木暮太一氏。企業経営者向けのビジネス言語化、出版コンテンツの言語化コンサルティング実績は毎月100件以上、累計で1万件を超えるという木暮氏は、まさに「言語化のプロ」。「言語化にセンスはいらない。考え方とフォーマットを身につけさえすれば、誰でも自分の頭の中を言語化させることができる」と、木暮氏は断言する。
今回は、そんな本書より一部を抜粋・編集して、「コミュ力が高いのに売れない営業マンの特徴」について解説していく。(構成:川代紗生)
「静かなのに売れる営業」と「しゃべりがうまいのに契約を取れない営業」の決定的な差
雑談がうまいわけでも、やたらとコミュニケーション力が高いわけでもない。
静かに淡々と説明しているだけなのに、なぜか、次から次へと商品を売ってしまうタイプの営業マンがいる。
熱量をこめてプレゼンしてもなかなか契約につながらない自分との決定的なちがいは何だろうと、疑問に思ったことはないだろうか。
実は、ほんのちょっとした言葉づかいの差が、成果に大きな影響を与えてしまうことがあるという。
そう語るのは、『すごい言語化』著者・木暮太一氏だ。木暮氏は、過去60冊以上の著書を出版してきたベストセラー作家であり、また、言語化コンサルタントとしても活動している、「言語化」のプロフェッショナル。
本稿ではそんな本書から、日々の仕事で使える「言語化」のコツを学んでいこう。
デキる人は使わない商談の「NGワード」
真面目にがんばっているのに成果が出ない営業マンが、商談でつい口にしてしまいがちいな「NGワード」があるという。
それは、「ご検討よろしくお願いいたします」という締めくくりの言葉だ。
1時間程度の商談が終わり、クライアントにプレゼン資料を提出し、いよいよこれから契約を決めてもらう段階──というタイミングで、「ぜひ、ご検討ください」と伝えてはいないだろうか。
何気ない挨拶のような言葉だが、実はこれが、商談の成功に大きな影響をもたらすという。
本当に言いたいのは「買ってください」ということかもしれないのに、それを濁して「ご検討ください」と伝えてしまう。
こうすることによって、顧客は言われた通り「検討」をはじめてしまう。その後、検討した挙句、購入に至らなかった、あるいはうやむやになって終わってしまった、ということがよく起こる。
「検討してください」ではなく、「◯月◯日までに申込書のこの欄に、サインをお願いします」と、具体的な行動を伝えること。
商談の最後で、顧客にプレッシャーをかけて購入してもらおうとしなくてもいいのだ。それよりも、「どんな行動をとってもらいたいか」を言語化するだけで、成果は大きく変わる。
ビジネスの言語化に必要な5段階項目
自社の商品の魅力を伝え、顧客にアピールし、契約してもらう。自分が考えた企画をプレゼンし、上司に承認してもらう。
このようにビジネスでは、自分の考えを言葉にし、相手に理解してもらわなければならない場面が多くある。
デキるビジネスパーソンは、相手に自分の思いを伝える前に、以下の5つの項目をしっかりと「言語化」するのがうまいそうだ。
第1段階:「提供する価値」の言語化
第2段階:「他社との差別化」の言語化
第3段階:「自社の信頼性」の言語化
第4段階:「価値が提供される理屈」の言語化
第5段階:「相手に取ってもらいたい行動」の言語化
それぞれ、順番にくわしく見ていこう。
第1段階:提供する価値の言語化
まずは、「相手にどんな価値を提供できるか」を言葉にしてみよう。売りたい商品には、どんな価値があるだろうか。顧客がその商品を買うメリットは何だろう。
第2段階:他社との差別化の言語化
次に言語化しなければならないのは、「なぜ、他の商品ではなく、この商品を買うべきなのか」だ。顧客からすれば、いくら「価値がある」と言われたからといって、それだけでは納得できない。価値がある商品は他にもあるからだ。
第3段階:自社の信頼性の言語化
差別化ができたら、今度は「自社の信頼性」を言葉で伝えてみよう。自社がどのような経緯でこの商品を世に出すに至ったのか、どのような思いで商品開発をしているか、などを言葉にする。
ただ、ここで一つ、注意点がある。
自社の信頼性を真っ先に伝える営業マンも多いが、あくまでも第1段階「価値の言語化」と第2段階「差別化の言語化」ができてはじめて語られるべきだ、ということだ。
第4段階:価値が提供される理屈の言語化
さて、なぜこの商品を、なぜ私から買うべきなのか、が明確になり、さらに、自社が信頼に値する会社だと思ってもらえれば、顧客の評価はぐっと高まる。
しかし、それだけでは不十分な場合もある。ここで大事なのは、「その価値が提供される理屈」を説明することだ。たとえば、「業務効率が3倍になるシステム」を提案するとしよう。そのとき顧客の頭に浮かぶのは、こんな不安だ。
「たしかに、すばらしいサービスだし、うちに必要なシステムだ。業務効率が上がるのはありがたい。でも、本当に実現できるの? どんなプロセスで、3倍になるの?」
提案する商品に斬新性があるときほど、「実現可能なのか」をたしかめたくなるだろう。
その不安を解消できないかぎり、顧客は契約を決められない。「3倍なんて、本当に実現できるの?」と躊躇してしまう人も多いはずだ。
ここで、「この商品が実際にどのように機能し、どのように価値を発揮するのか」を言語化し、相手に納得してもらう必要があるのだ。
第5段階:相手に取ってもらいたい行動の言語化
さて、そして最後は、意外に大事なのが、「行動」の言語化だ。
最終的に、顧客に何をしてもらいたいのか。どんな行動を取ってもらえば、自分の仕事はうまくいったと言えるのか。それを言語化できていない人が、案外多いのだという。
冒頭の「ご検討ください」と言ってはいけない、というのもわかりやすい例だ。
自社商品の説明をすることや、クライアントと仲良くなることに精一杯で、「何をどうしてもらいたいのか」を言語化できていない、というケースはよくあるらしい。
「ご検討ください」ではなく、顧客にしてもらいたい行動を、しっかりと伝えよう。
商談前のセルフチェックリスト
さて、あらためておさらいすると、このようなリストになる。
第1段階:「提供する価値」の言語化
第2段階:「他社との差別化」の言語化
第3段階:「自社の信頼性」の言語化
第4段階:「価値が提供される理屈」の言語化
第5段階:「相手に取ってもらいたい行動」の言語化
ふだん、自分がプレゼンをするとき、クライアントとの打ち合わせに臨むとき、この5つの要素を言語化できているか、セルフチェックしてみるのもいいかもしれない。
『すごい言語化』には、ずば抜けたコミュニケーション能力がなくても使える、「言語化フォーマット」がいくつも紹介されている。
ペラペラと饒舌に話せない、トーク力に自信がない人にこそ、試してもらいたい一冊だ。