「無数のタッチポイント」と「顧客データの統一」で新たな顧客体験を創造

 スーパーOMOと日本のOMOの大きく異なる点は、主に2つあります。ひとつはオンライン・オフライン双方における「タッチポイント」の数です。

 躍進が目立つのは、いわずと知れた「ECの巨人」アマゾンです。レジをとおさずに買い物ができる「Amazon Go」をはじめ、リアル店舗を次々と展開。大手スーパーマーケットも買収しながら、オフラインでのタッチポイントを増やしています。

 加えて、ここでも中国テック企業の台頭が目立ちます。オンラインではライブコマース、メタバース、アプリ、SNS。オフラインでは店舗、自動販売機、宅配ボックス、タクシー、ホテルと、双方において多種多様なタッチポイントを設けており、その組み合わせは無数に存在します。

 そもそも、中国ではオフラインとオンラインが日常生活に完全に溶け込んでおり、消費者も意識すらしていません。もはやOMOという言葉も使わないほどです。

 とりわけ街中で目立つのは、「自動棚」と呼ばれる小型の自動販売機。その自動棚のQRコードをスマートフォンで読み込めば、ほしいものをその場ですぐ購入することができます。

 導入コストが1万円前後からと安く、法人だけでなく個人も気軽に副業として設置運営し、さまざまなものを販売しています。スマートフォンによるアナリティクスが直感的でわかりやすく、収益や売上をリアルタイムで確認できます。

 スーパーOMOのもうひとつの特徴は、オフライン・オンライン双方での顧客IDが統一されており、顧客データが完全に同期されていることです。そのため、顧客一人ひとりの消費趣向や購買行動の解像度を高め、よりパーソナライズされた顧客体験を実現することができます。

 これらの「無数のタッチポイント」と「オンライン・オフラインにおける顧客データの同期」によって、顧客一人ひとりの行動特性を浮かび上がらせ、これまでとはまったく異なる顧客体験を生み出しているのが、これらの最新テック企業が実践する「スーパーOMO」です。

 本稿では、その「スーパーOMO」の顧客体験を生み出しているアマゾンの事例を取り上げます。