「やってみたいこと」はたくさんある

永井:やってみたいことは、いろいろあります。「こんなのを期待していたわけではない」とか言われるだろうなと思いながらも、やってみたいですね。やってみた結果、大怪我することもあるでしょうけど。

今村:僕もやってみたいことがいろいろあるんやけど、実はいろいろな作家さんと対談していて「やってみたいことがある」って言う人は意外と少ないんですよ。逆に永井さんが新鮮に感じられるくらい。

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永井:でも、最近はやりたいことを「やります、やります」って言い続けた結果、詰めすぎになって困りぎみなんです(苦笑)。

今村:僕はその反省を生かして、チームでやることにしたんです。僕からはお仕事を受ける・受けないの決定権が奪われて、“秘書軍団”が決定を下すことになってます。そうしたら、お中元とかお歳暮の中身が渋いものから若干可愛いものになった(笑)。この前は、僕がいないのに秘書と編集者が食事してたし(笑)。

書きたい作品が一番強い

永井:「ここを落とせばうまくいく」とバレてるんですね(笑)。いずれにしても、「こういうのを書いてみてくれませんか」と言われたときは、ちょっとごめんなさいという感じになります。作品を書くにあたっては、「これとこれとこれの中で、どれならやらせてくれますか?」みたいな感じで提案するようにしています。

今村:それは僕もまったく一緒ですね。だいたい2つか3つ企画を用意しておいて、1つ目の反応が鈍かったら、「じゃあ、これは?」と言う。

永井:そうすると、一番しんどそうな企画が選ばれたりするんですけどね。

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今村:「書きたいものだけ書く」という言葉だけ聞くと傲慢っぽいけど、そうじゃなくて、僕たちは書きたいものが一番強いことを知っているんです。

永井:そうじゃないと動機をつくれないですからね。

今村:やりたいことを確実にやっていくために、もっと実力をつけていかなければと思いますね。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)の刊行を記念した特別対談です。