生命保険業界では、自社の専属販売チャネルだけでなく子会社生保を設立し、乗り合い代理店市場に進出するなど販売チャネルの多様化に積極的だ。だが、大手生保の一角を占める明治安田生命保険はあくまで専属の営業職員(生保レディー)による保険販売に重きを置く。その理由について、永島英器社長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 藤田章夫、片田江康男 ※インタビューは2023年5月中旬に実施)
他生保とは一線を画す明治安田が
営業職員チャネルにこだわるわけ
――大手生保各社が販売チャネルを多様化する中、明治安田生命は営業職員チャネルに重点を置き、代理店向けの子会社生保をつくるといった方針も出していません。この戦略に変更はありませんか。
生命保険各社がさまざまな取り組みをしているのに加え、お客さまの価値観が変わってきているのは確かですが、当社は基本的に専属の営業職員(生保レディー)チャネルがメインであることに変わりはありません。
保険という貨幣的価値や経済的価値を提供するだけでなく、健康や地域社会など社会的価値の重要性が増していることから、双方の好循環を起こそうとしています。当社のフィロソフィーやパーパスにはそうした意味が込められており、それを体現できる営業職員を通じてお客さまや社会に理解していただくことが、一番大切なことだと考えています。
AI(人工知能)やロボット化の時代になればなるほど大事になるのは、人にしかできない「意味を考えること」だと思います。今までと違って、お客さまは会社と付き合う意味を考え、「あなたは何者なのですか?」と問いかけてきます。とりわけ生命保険は長期契約であり、ある種の社会契約ですので、「わが社はこういった会社で、こんなことを目指しています」といった説明が必要になります。そのためには、当社のフィロソフィーを体現する専属の営業職員がふさわしいと考えています。
――保険に加入する契約者は、保障や資産形成に対するニーズが強く、保険料や保障の中身について重要視していると思います。そこまで保険会社のフィロソフィーに対して、お客さんの意識が向いているのでしょうか。