ジャニーズ事務所の性加害問題について「外部専門家による再発防止特別チーム」が「調査報告書」を発表したのは2023年8月末。この中で、故・ジャニー喜多川氏による長年にわたる性虐待の実態が、被害者からの証言の形で記されていた。しかし、いわゆる「男性も性被害者」として認める法改正がなされたのは17年になってからのことだ。法改正が遅れたことによる影響を改めて振り返ってみたい。(フリーライター 鎌田和歌)
衝撃的な「ヒアリング結果」
「調査報告書」では、ジャニー氏による性加害は1950年代から2010年代半ばまで続いていたものであり、被害に遭った少年が多数いることが認定された。
また、その原因は4つ「ジャニー氏の性嗜好異常」「メリー氏による放置と隠蔽」「ジャニーズ事務所の不作為」「被害の潜在化を招いた関係性における権力構造」と指摘されている。
ジャニー氏の個人による問題と、隠蔽した組織の問題の両方があり、さらにその背景には「マスメディアの沈黙」「業界の問題」があったという指摘を、マスコミや業界関係者は重く受け止めなければならないだろう。被害の一端を知りながら、あるいは薄々勘づいていながら、ほぼ全ての人が何も行動を起こさなかったのだ。
調査報告書の中で、特に読む人に衝撃を与えたのが、性加害についての「ヒアリング結果」だろう。この中では具体的にどのような被害があったのかについて、匿名の証言が列挙されている。
「ジャニー氏は1万円を渡してきたので、これは売春のようだと思った」「私が被害を受けている間、周囲のジャニーズJr.たちは見て見ぬふりをしていた」といった証言が悲痛である。
性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。
ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい。