特徴は「完全なる実力主義」と
「ワンマン経営でトップダウン」

 まず業界傾向を見てみよう。親しい友人や家族への推奨度を示すNPSスコアが平均以下の企業の中で、「法令順守意識」が低スコアの企業50社を洗い出した際、最も多く出た業界は「小売(百貨店・専門・CVS・量販店)」、次いで「教育、研修サービス」、「人材サービス」という結果になった。
 
 次に企業傾向を見てみよう。法令順守意識のスコアが低い企業に寄せられた社員のクチコミを見ると、「完全なる実力主義」「ワンマン経営でトップダウン」という2つの特徴的な傾向が見られた。

 以下、現役社員・元社員のクチコミ(原文ママ)を、まずは「完全なる実力主義」について見てみよう。

「実力主義で、成績の悪い人は発言する権限がない。成績が上がれば賞与や研修など待遇がよくなる。買っていただくためなら、閉店後もお客様に交渉を続けたり、何度も営業電話をしたり、とにかく押し売りが強い。あとでクーリングオフされようと、とにかく売る」(営業、在籍3年未満、退社済み、女性)

「完全なる実力主義+強運の持ち主がのし上がれます。たとえ新卒であっても、成果を残したタイミングと拠点責任者の席が空いたタイミングが被れば、一年未満であっても拠点責任者になれます。その分、成果を発揮し続けない限り、降格も早いです。また、毎週のように人事異動があります。全国に20ある事業所のどこに異動になるかはその時のお楽しみ」(営業、在籍3~5年、現職、男性)

 次に、「ワンマン経営でトップダウン」について見てみよう。

「社長のワンマンで、周りの役員達は何も意見を言わないイエスマンしかいない。社長、役員共に現場が全く見えておらず、そういう人達が方針、規定、人事を行っているので、全くズレた方向に向かっており、現場がその負担を担っている」(営業、在籍20年以上、現職、男性)

「基本的なトップダウンで上の方に行くほど、みんな社長の顔色を伺っている。ベテランで残っている人は役職を上げていっている優秀な人か、給与が高いので無気力ながらもしがみついている人で二極化。5年以内にやめる人が多い」(店舗責任者、在籍5~10年、退社済み、女性)

「完全結果主義」という企業傾向は、法令順守意識が低い業界として挙げた「小売(百貨店・専門・CVS・量販店)」「教育、研修サービス」「人材サービス」で特に重要視される可能性が考えられる。数字の良しあしがわかりやすく、結果が良ければ評価されやすい企業文化がゆえ、数字のためなら手段を選ばないというようなクチコミが印象的だった。

 また、ワンマン経営でトップダウンという点では、3業界とも専門性が高く自社で業務が完結する仕組みになりやすい可能性が考えられる。外部の人からは何をしているかわからない・自社が行なっていることは世と照らし合わせて適正かどうか判断がつかないといったようなブラックボックス状態は、不正が起きるリスクが高くなるだろう。