「大いなるマンネリ」で
番組のブランド力を磨く
番組プロデューサー5年目になる井田和秀氏は、ここまで番組を続けられた理由は「阪神さんの人柄」だと言い切る。番組を心から愛する気持ちが、ファンやスタッフを巻き込む力となり、存続する強い力になっていると話す。
「数カ月に一度のペースで、阪神さんにもロケに参加いただくのですが、番組予算と照らし合わせると、なかなかお願いできないのが現状なんです。阪神さんはその事情を理解してくださって、『休日に釣りをするときにカメラを回してもいいよ』と言っていただいています。休日に付いていく形を取っているので、ギャラについても考慮いただける。それは、番組にとって大変助かることですし、何よりその気持ちが番組を支える人たちに伝わって、何かとサポートしていただけるんです」
阪神氏も、番組を続けられるのは「『ビッグ・フィッシング』に愛着を持つ人の支えがあってこそ」と話す。
「船に乗ってロケをしているので、いつも危険と隣り合わせなんです。でも、これまで一度も大きな事故はありません。それだけでもすごい。それに、小さなかすり傷だったり釣り糸が引っ掛かったりするケガはあると思うんですが、誰もそんなことを声に出さない。やっぱり、ちょっとしたことでも『番組に迷惑をかけたくない』という思いになるんでしょうね。別に誰も『言うなよ』とか強制はしてませんよ(笑)。それだけ番組を愛しているんやと思いますわ」
また、番組への愛着を象徴するエピソードを、井田氏が教えてくれた。
「サンテレビ事業部が『ビッグ・フィッシング』のテーマミュージックが流れるキーホルダーを作成するときに、試作品を持ってきたんです。確認してみると、冒頭のイントロが入ってない。これに、スタッフが『イントロがないと、ビッグ・フィッシングじゃない』と指摘して突き返した(笑)。秒数が短いほどロットの値段を下げられるんですが、それだとファンが納得しないと思ったんです。それぐらい番組への愛着は浸透しているんです」
井田氏は、スタッフにもファンにも愛されている番組だからこそ、「あえて、現在の形を守り抜く」ことをプロデューサーとして大切にしていると話す。
「番組を引き継いだ当初は、いくつか新しい企画もやってみましたが、なんかしっくりとこない。私がそう感じるんだから、昔からのファンはもっとそう思うはずなんです。だから、今では珍しく、番組のオープニングとエンディングもしっかりと放送する。番組構成も、不変。“大いなるマンネリ”と言われるぐらいがちょうどいいと思っています。私が、プロデューサーを務めているうちは、この形は絶対に変えないでおこうと思っています」