予算の限界を突破する
番組づくりの創意と工夫

 他の釣り番組にはない企画を盛り込んだ『ビッグ・フィッシング』は、1984年10月12日夜10時に第1回が放送された。1時間のプログラムの中で、3本のロケVTRを紹介し、魚料理を紹介するコーナーなど、盛りだくさんの内容だった。

 さらに番組は収録当日に放送する、いわゆる「撮って出し方式」を採用した。その分、スタッフの負担は増えるが、小松氏はあえてこのスタイルを選んだ理由をこう語る。

「関西ローカルに的を絞っていたので、情報の新鮮さが生命線という気持ちがありました。だから、収録したその日の夜には放送してしまう。生放送でもいいんですが、それだと夜までスタッフを拘束することになり、交通費などで経費が高くなるので、予算内で収めるための苦肉の策でした(笑)」

 順調に釣り人たちから支持されるようになり、次々と釣具メーカーなどもスポンサーとして協力してくれる体制が整っていく。

「スポンサーの数が限られると、どうしても番組主導で進めにくいというのが民放テレビ局の宿命です。言いにくいことですが、そのスポンサーをつなぎ留めたいばかりに、何でも言うことを聞こうとする。でも『ビッグ・フィッシング』は幸いなことに、たくさんのスポンサーに協力いただいたので、番組がやりたいことをどんどん実現できました」

 番組スタート時に掲げた理想を実現し、釣り番組として異例の人気を集めることになった『ビッグ・フィッシング』は、90年代に突入してからも、ますます魅力を高めるために、あらゆる施策を打ち出していく。その一つが、オール阪神氏の起用だった。