大手塾と相性がいい子、悪い子は?
矢萩:そもそも中学受験の目的を「偏差値で決めた志望校合格」というふうに考えるのであれば、大手塾に乗るのがいちばん合理的なんです。ただし、大手塾のやり方と相性がいい子もいれば、相性が悪い子もいますので、悪いまま続けてしまうと、勉強自体が嫌いになってしまったり、生活に悪影響が出たり、さまざまなリスクがあります。また、従来型の受験対策は、時代との相性もズレはじめています。つまり横並びの詰め込みをテストで管理するという中学受験の勉強法は、正解のある問題より正解のない問題を解く技術が必要になる今の時代にとってベストマッチしていないのは明らかで、偏った受験勉強をしてしまうとある種の能力だとか可能性を閉じてしまう可能性もあります。もちろん、競争するのが楽しい子やいろいろ網羅的に学ぶなかで自分がやりたいことや方向性が見つかる子もいるので、何度も言うように相性次第なのですが。
安浪:私がやっている家庭教師の仕事って、中学受験をするために塾に行っているけれど塾についていけないからフォローしてください、という層がいちばん多かったんですけど、ここ数年は、塾に通っている子とそうでない子の割合が6:4ぐらいなんです。塾に乗っかっていないご家庭の場合はカウンセリングでお会いしてみて、ご家庭の事情や中学受験の目的、志望校、親御さんの意見や本人の意見を聞いたうえで、やはり大手塾に行ったほうがいいんじゃないでしょうか、大手のなかだったらここかな?というアドバイスをすることもあれば、大手じゃなくてまずは算数から始めてみましょうかとか、2科目だけ個別で始めてみるのもありますよね、といったようにカスタマイズします。本当にご家庭によります。
矢萩:お父さんお母さんがどういう価値観や人生観、仕事観を持っているのかということだけでなく、本人の性質と社会の動きを考えたうえで、中学受験をどう活用するのか、という方針を立てることが大事ですね。そのなかで、うちの子はとりあえず大手塾もありかな、とか、いや、うちはやりたいことだけ伸ばして、1教科だけどこかの塾に行かせようとか、あるいは苦手なところだけ補強してみようとか、いろんな方向性があると思うんですね。そこをちゃんと見る。受験するから大手塾、みたいなデジタルな考え方をするのではなくて、全体的な情報をみんなでシェアしたうえで、じゃあこういうふうにしていこうか、と家族のなかで対話して、合意形成できるといいんじゃないかなと思いますね。