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人気YouTuberが大きな荷物を玄関内まで運んでもらえなかったと文句を言って物議を醸したが、実際ドライバーは理不尽な荷主からの「返品」「弁済」を非常に恐れているようだ。物流を支えるドライバーたちの知られざる苦労とは?本稿は、橋本愛喜『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
段ボールは梱包材か
それとも商品の一部か
読者各位に問いたい。
ネット通販などで商品を買った時、段ボールに1cmほどの穴が開いていたら、苦情を入れるか。中身の商品は全くの無傷だ。それを梱包する段ボールにだけ傷がついていた場合、「返品」や「弁償」の依頼をあなたはするだろうか。
私がトラックドライバーの労働環境のなかで最も理不尽なうちのひとつだと思っているのが、この「段ボール問題」である。世界でも類を見ないほど輸送クオリティの高い日本では、本来梱包材である段ボールも『商品の一部』と考える不届きものが一定数存在するのだ。
実際に現場には、ほんの少し段ボールに傷がついたり、荷物を縛り固定するために使ったラッシュベルトの跡がついたりしただけで、商品を返品させられるケースがある。
何千歩か譲って宅配の場合は「個人の所有物」であるから、ある程度そういうクレームが発生しても事情を汲む余地はあるかもしれない(個人的には全くもって納得できないが)。
が、私がより憤っているのは、これがスーパーやコンビニに陳列されるラーメンやお菓子、飲料などを運ぶ「企業間輸送」の段ボールで発生していることだ。
末端の消費者に出す荷物でもないのに、少しでも梱包材に傷がついていたらクレームになるというのは、もはやトラックドライバーへの「いじめ」でしかない。
「飲料を運んでいます。商品が入れられている段ボールに少しの擦れがあるだけで返品させられます。もちろん中身は無傷です」
「バラ積み(ひとつひとつ手での積み込み)による荷物同士の擦れで返品。夏場に汗が段ボールに付いたから返品。緩衝材の汚れが段ボールについても返品」
敢えて強調しておくが、段ボールは梱包材だ。つまり「中身が傷つかないようにするためのもの」で、傷がついてナンボの存在である。
スーパーやコンビニなどに届けられれば、店員によって開けられ、そのあとは「ごみ」になるだけだ。にもかかわらず、コンビニに配送する段ボールでは「糊がちょっとでも剥がれてたら返品させられる」と訴えるドライバーもいた。
「中身は無傷なのに、傷ついたら段ボールだけ発注して詰め替え。無駄なことばかりしています。どこがエコなのか。詰め替え用の段ボールも納品や積み込みで近くに行った時に自分で取りに行き、謝って新しいのを受け取って詰め替え、再度お店に運びます」
そんな荷物のメーカーに限って「SDGs」とか言うから閉口しかしない。
ドライバーから聞いた「ほんの少しの傷で段ボールを運送会社負担で替えさせた会社」が、その後、某省庁主催のSDGs関連表彰制度で表彰されていたこともあった。ちなみに、企業などが「環境に配慮している」とアピールしておきながら、大した活動をしていないことを社会学的には「グリーンウォッシュ」と言ったりする。
ドライバーが荷物を
「買取」するケースも
こんなことが少なくない現場で起きていること、許されていることが信じられないのだが、実はこの理不尽にはさらに続きがある。
なかには段ボールが傷つくと「返品」ではなく、ドライバーがその荷物を「買取」させられることもあるのだ。
さらにあり得ないことに、ひとつの段ボールが傷ついただけで、パレットに積まれた荷物まるごと「お買い上げ」という場合もある。
本書より。ダンボールの角潰れで買取となった例。
驚くな、理不尽はまだ続く。
その「買取」、カネは払わせておいて商品そのものはドライバーに渡さない荷主までいるのだ。もうこうなりゃ、新手の詐欺だろ。
「ある飲料メーカーは破損で弁済しても品物は荷主の所有物になります。弁済は会社の荷物保険。個人的には免責の分を月1万円ずつ3回払いしました」(注:弁済…荷物の積み下ろしの際、荷物が無傷であっても、段ボールにわずかな擦れや汚れ、角潰れがあるだけで返品・買取させられることがある。)
「弁償だけさせて品物は渡さないとか意味分からん。中身大丈夫でも箱に傷つけただけで買取。輸入品の唐揚げの箱が破れてたのに気付かず、2万円の弁償で商品はメーカー預かりでした」







