あらゆる鍵を一元化
1つのIDで管理
スマートロックはあくまでビットキーの事業の一形態にすぎない。現在、主に住宅向けの「homehub(ホームハブ)」、オフィス向けの「workhub(ワークハブ)」の2つのプラットフォーム事業を展開している。
「両方とも基本的には、1つのIDであらゆる鍵を管理するための仕組みです。現状では、例えば住宅の場合、家の鍵、マンションのエントランスやエレベーターを開くカードから、ウェブサイトへログインするためのID、ウェブ会議のIDまで、さまざまな鍵が存在しています。
いくつもの鍵を持ち歩き、複数のIDを管理しながら生活している人がほとんどでしょう。それらを当社の技術でつなげ、すべてをプラットフォーム上で完結できるようにするというのが、私たちのサービスです」
不動産会社のメリットとしては、物件の鍵をスマートロックにすると、入退去時の鍵の受け渡しや交換などが不要になったり、内見の予約に基づいて暗証番号を発行するだけで済んだりと、業務負担が減る。その一括管理には専用のシステムが必要になるが、ホームハブを使えばそれが可能となる。
オフィスでいうなら、ビル全体のシステムと連動させることで、すべてのセキュリティゲートやエレベーターなどが1つのIDで操作できるとともに、ブースの予約管理や従業員の出退勤の管理までも行えるようになる。
既存のオフィスでは、いくつものメーカーの製品が入り乱れているような状況だが、それらの鍵を横断的に管理できるのが、ビットキーの提供するシステムの強みだ。
こうして鍵を起点とした新たなインフラの構築を行うのが、ビットキーの目指すところであり、世に普及させるには不動産業界との連携が欠かせないが、「普及のスピードは今後もそこまで早くはならないだろう」と寳槻氏はいう。
「オーナー、テナントや入居者、仲介会社、管理会社など、不動産業界には多くのステークホルダーがいて、それらすべての合意がないとなかなか物事が動かない構図です。そうした中で新たなインフラを広めるため、私たちは関わるステークホルダーの数を減らすことを常に考えてきました。
例えばサブスクリプションにすることで、オーナーが支払う初期コストを実質無料としたり、借り手のいない空き部屋を狙ってスマートロックを設置することで、不動産事業者の手間を省いたりしています」