最終回に当たる今回は、新興国のある企業のカルチャー・トランスフォーメーションの取り組みを紹介したい。この企業は1970年代にブラジルで創業し、今やグローバルに事業展開する売上数千億円規模、従業員もブラジルだけで1万5000人以上という小売業である。

 まず下の絵を見ていただきたい。これは、ブラジルのある企業のマネージャーが描いた「自社の企業文化」である。

 この図を見て、どのような企業文化の会社だと思われるだろうか?

 コミュニケーションは非常に階層的・硬直的で、管理職は男性中心になっている。一番上に描かれているCEOは非常に満足した様子に見えるが、彼が何を言っているのかは、他の社員には全く理解されていない。幹部やマネージャーたちは、口にテープが貼られている。自ら意見することができないのであろうか。また、組織の下の階層に行けばいくほどクエスチョンマークが多くなり、髪の毛まで無くなっている。よりストレスが大きいということであろう。

 この企業の業績がどうであったかは、推して知るべしである。マーケットシェアは下降の一途をたどり、株価も低迷。かつて急成長を遂げ、市場のリーダー的存在であった同社は、大きな危機に立たされていた。