前回は、カルチャー・トランスフォーメーションとは何か、何故、今それが重要で、また難しいのかについて述べた。第2回目は、確立されつつあるカルチャー・トランスフォーメーションの方法論を紹介したい。

 筆者が所属するヘイグループの調査・研究から、企業文化には、3つのポイントが存在することが分かってきている。

1.表面的に見える要素だけでなく、目に見えにくい水面下の要素が存在し、これが大きな影響を持っている。

2.企業文化は、個人(動機や価値観)、社会・グループ(人間関係)、組織(目的や存在意義)の3つの側面が絡み合っている。

3.企業文化と、それが作りだす結果の間には、一連の流れがある。

 これらのポイントをうまく活用することで、企業文化の変革が可能となる。以下、それぞれについて、見てみよう。

1.水面下の要素に
標準を合わせる

 企業の会議室に、社員の行動変革を意図した標語が掲示されているのを、皆さんも見かけたことがあるだろう。例えば「チャレンジ精神」とか「顧客主義」といったものである。あるいは、人事制度の評価項目の中に、そういったものが入っている企業もあるだろう。

 そういうものをみると、「なるほど、この会社らしい」としっくりくるケースもあれば、いかにも表面的で、しらじらしく見えるケースもある。たしかに、こういった標語や、人事制度、あるいは行動要件といったものは、企業文化を形作る要素の1つではある。しかし、もっと深いところで、行動に大きな影響を与える要素が存在する。根本的な信条・価値観や、組織間で共有された存在意義や目的などである。