資生堂の「企業ポエム」発表会?ツムラ&カゴメとの提携会見を空疎にした“お家事情”の深刻Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 何とも奇妙な記者会見だった。創業者による半ば公然の性加害が世界的な批判を浴びているジャニーズ事務所による茶番劇のことではない。資生堂が9月20日、ツムラ並びにカゴメとそれぞれ戦略提携契約を結び、身体の内側から美容効果を追求する「インナービューティー事業」を開始すると発表した広報イベントのほうである。

 日本を代表する薬粧、医療用漢方、食品・飲料メーカーが一堂に会する新規性は注目されたものの、いざ蓋を開けてみれば、具体性を欠くビジネスモデルや希薄なエビデンスに面食らってしまった。資生堂による、資生堂のための、資生堂の企業ポエムを聞かされたという印象だ。異業種の慣れぬ会見の場に引き出されたツムラの加藤照和社長、カゴメの山口聡社長も、どこか居心地の悪そうな表情を浮かべていたように見受けられた。

 3社の発表によると、まずは「シセイドウ ビューティー ウエルネス」(SBW)なる新ブランドを立ち上げ、第1弾として、24年2月を目処にツムラの漢方知見をベースにしたサプリメントとカゴメの野菜関連技術を生かした飲料を開発、資生堂の販売網を通じて展開するのだという。25年以降は、中国をはじめとするアジア地域での販売も目論んでいる。

 さらに資生堂によると、ツムラやカゴメ以外の企業ともアライアンスを結んで「インナービューティー事業」の商品やサービスのラインアップを拡充していき、将来的には「J-Beauty Wellness」と称するソリューションを全世界に向けて発信していく構想を示した。「J」という冠文字は、もはや忌むべきシンボルでしかないように思われるが、同社としては、仏ロレアルや米エスティローダーに対抗するためにも日本発という高品質をアピールしていきたいのだろう。

 本稿では、現時点で、海の物とも山の物ともつかない「インナービューティー事業」については論じない。共同開発するプロダクツが手応えを得ない限りは、ツムラやカゴメにとっても同床異夢の状況が続くと思われる。焦点とすべきはむしろ、他社の力を借りてまでしてSBWという新ブランドを立ち上げざるを得なくなった資生堂の御家の事情のほうである。