米欧長期金利の急上昇
イールドカーブ変動の要因分解
今年後半の米欧長期金利の上昇は、市場の予想を大きく上回ってきた。5月まで3%半ばで推移していた米国10年国債の利回りは急上昇し、5%を突き抜けようかという勢いだ。
背景にあるのは、インフレと賃金の下げ渋りと消費を中心とした景気の予想以上の底堅さだ。インフレ退治に米連邦準備制度理事会(FRB)が苦戦していることが長期金利の上昇をもたらしている。
金利上昇の動きが今後どの程度続くかを判断するには、FRBの苦戦がどのように長期金利を押し上げているかについての踏み込んだ分析が不可欠だ。
市場が注目している分析は、様々な年限のイールドカーブの変化が、①短期政策金利の予想経路(パス)と、②タームプレミアム、という2つの変動要因のいずれによるものなのかを要因分解するものだ。
10年債の利回りは、短期金利での投資を10年間ロールオーバーしていった際に期待される利回りと裁定関係がある。このため短期政策金利の予想パスは大きな影響力を持つ。
ただ、短期金利のロールオーバーに比べ、10年債への投資は償還までの期間が長い分、価格変動や流動性などのリスクがある。その対価として投資家が追加的に求めるリターンがタームプレミアムだ。
長期金利がどちらの要因で動いているかを考察することは、今後を見通すうえで重要だ。