FRB(米連邦準備制度理事会)は今後も利上げを継続する見込みだ。しかし、長期金利である米10年国債利回りは足元ではピークを付けた。また、株式市場も水準を切り上げてきている。この動きの背景にあるものは何なのか。解き明かしていく。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
米国の長期金利は低下し
株価は急速にリバウンド
6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)において4%弱までの政策金利引き上げが示唆されたことから、米国債利回りは各年限で3.5%レベルを試す動きとなったが、FOMCから2カ月経過した今、10年債利回りについてはおおむね3.0%以下が定着している。
7月末にかけては中国のゼロコロナ政策長期化に対する懸念が強まる一方で、欧州におけるエネルギー価格高騰が各国景気の減速要因とみなされ、世界経済減速が喧伝されながら米国10年債利回りが2.5%に迫った。
他方、米国の株式市場が急速にリバウンドしており、米国債利回り低下が景気減速懸念によって生じたとの説明には違和感を覚える。
世界経済減速懸念がうたわれるなか、早い時期にFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを終了し、利下げに転じるのではないかとの声も聞こえ始めた。
ただ、米国2年債利回りは再び3.5%を目指すような動きを見せ始めており、利上げそのものについては6月のFOMCで示された程度の水準まで行われることが織り込まれてきている。
3.0%割れ定着の10年債利回りと3.5%を目指す2年債利回りとの組み合わせは、いわゆる逆イールドが発生していることを意味するが、逆イールドは総じて景気後退を示唆するサインとみなされやすい。ただ、米国の株式市場は上昇傾向に転じており、むしろ米国経済に対する強気な声すら聞こえ始めている。
利上げが継続するなかでの、長期金利である10年債利回りの低下と株価上昇。一体、何が起きているのであろうか。次ページから謎解きをしていく。