上田氏の投稿の趣旨が「大きな神社なら財政に余裕があるはず」ということであっても、やはり論点がずれている。例えば、世界文化遺産に選定され、『枕草子』や『源氏物語』にも登場する「下鴨神社」においては、その敷地内に高級レジデンス「J.GRAN THE HONOR 下鴨糺の杜」が建設されている。詳細は、『京都・下鴨神社の敷地内に高級レジデンスが建てられた理由』に詳しい。
この記事の中で、同プロジェクトが始まった理由について、次のように記述されている。
《近年の日本では、存続が危ぶまれる寺社の数が増加中だ。氏子や企業からの寄付が減少しており、参拝者からの賽銭やお守りなどの授与品を頼りにやりくりを考えなければならないからである。世界遺産に認定された下鴨神社も例外ではなく、21年に1度の『式年遷宮』に向け、多額の費用が必要となる事情を抱えていた》
また、下鴨神社は、明治神宮と同じような境遇を持っている。「縄文時代から続く原生林『糺の森(ただすのもり)』に囲まれ、広大な敷地(約3万6000坪/東京ドームの約3倍)を維持し続けている」(同記事)のだ。
明治神宮外苑の再開発で
樹木や緑地は「増える」
改めて説明しなくても徐々に認識が広まりつつあるが、ここで明治神宮外苑の再開発について簡単に解説をしておく。「知っている」という人は読み飛ばしてもらって構わない。
明治神宮は、大きく内苑(原宿駅前に入り口があって緑が豊かなエリア)と外苑(イチョウ並木があり、野球場をはじめとした鉄筋コンクリートの建物が中心のエリア)に分かれている。内苑を維持するのに莫大なお金がかかり、商業エリアの外苑からの収入が内苑を支えている。
外苑にはプロ野球球団・東京ヤクルトスワローズの本拠地である明治神宮野球場(神宮球場)がある。神宮球場は昔の基準で造られているため、現在の日本におけるプロ野球の標準から見るとかなり小さい。それは、得点の入りやすさやホームラン(本塁打)の出やすさが球場によってどう変わるかを示すパークファクター(PF)を見れば分かる。
読売新聞『神宮球場は1.44、ナゴヤは0.58…パークファクターご存知ですか』(22年7月12日)によると、《セ(筆者注:セントラル・リーグ)でPFが最も大きいのはヤクルトの本拠地・神宮の1.44で、最も本塁打が出にくいのは0.58だった中日のバンテリンドームナゴヤだ》という。つまり神宮球場は、標準の1.4倍以上ホームランが出やすい球場ということだ。
神宮外苑を再開発することで、この神宮球場の改修だけではなし得ない、バリアフリー化や試合終了後に起きる危険な混雑の緩和などが成し遂げられる。