一人暮らしの動物好きをうつ病へと誘う「ペットの行動」とは動物は人を癒すが、ペットの飼育がメンタルヘルスに対してマイナスに働いてしまうことも?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

一人暮らしでペットを飼っている人は
うつ病リスクが高い?

 ペットを飼っている独居者には、うつ症状のある人が多いことを示すデータが報告された。ペットのいない独居者よりも、そのような人の割合が高い可能性があるという。国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の三宅遥氏らの研究結果であり、詳細は「BMC Public Health」に9月11日掲載された。

 うつ病は各国で増加しており、世界的な公衆衛生上の問題となっている。抗うつ薬で寛解に至るのは患者の3分の1程度にとどまるため、うつ病の発症を予防する因子の特定は喫緊の課題である。これまでに行われた複数の研究からは、独居がうつ病のリスク因子の一つであることが示唆されている。

 一方で、家族の一員としても捉えられることもあるペットを飼育することが、独居によるうつ病リスクを押し下げるかどうかについて、詳細な検討はされていない。三宅氏らは、一人暮らしの人はうつ病リスクが高いとしても、ペットを飼育している場合は、その関連が減弱されるのではないかとの仮説を立て、同居家族やペットの有無別に、うつ症状のある人の割合を比較検討した。

 この研究は、同センターが中心となり国内の複数の企業が参加して行われている職域多施設研究(J-ECOHスタディ)の一環として、2018~2021年に実施された。大手企業5社の従業員のうち健診を受診した1万7,078人の中で、1万2,847人が本研究のためのアンケート調査に回答した。解析に必要なデータが不足している人を除外し、1万2,763人(平均年齢42.5±12.4歳、女性12.1%)を解析対象とした。

 アンケートにより、同居家族やペットの有無を把握し、全体を以下の4群に分類した。同居者あり/ペットなし群(54.4%)、独居/ペットなし群(27.9%)、同居者あり/ペットあり群(16.5%)、独居/ペットあり群(1.2%)。また、うつ病のリスクは「うつ病自己評価尺度(CES-D)」で評価し、33点中9点以上の場合をうつ症状ありと判定した。