アステラス製薬Photo:Yuriko Nakao/gettyimages

新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は中外製薬や武田薬品工業などの「製薬」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 笠原里穂)

中外製薬・第一三共は2桁増収
アステラス製薬も増収…でも減益予想のワケ

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製薬業界4社。対象期間は2023年5~9月期の四半期(4社いずれも23年7~9月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・中外製薬
 増収率:14.5%(四半期の売上収益2579億円)
・武田薬品工業
 増収率:4.1%(四半期の売上収益1兆431億円)
・第一三共
 増収率:14.7%(四半期の売上収益3755億円)
・アステラス製薬
 増収率:3.1%(四半期の売上収益3921億円)

 製薬業界の4社は全てが増収となった。中外製薬と第一三共は2桁増収となっている。アステラス製薬は、直前の四半期(23年4~6月期)では4社で唯一、前年同期比で減収だったが、今回は増収となった。

 アステラス製薬が増収に転じた要因は何だったのか。また、同社は23年11月1日に行った決算発表で24年3月期通期の利益予想を大幅に下方修正している。アステラス製薬といえば、中国現地法人の幹部である日本人社員がスパイ容疑で3月に拘束され、10月には中国当局に逮捕されてしまうという衝撃的な事件が日本国内に衝撃を与えた。ただ、本件や中国ビジネスと今回の大幅下方修正は別の話だ。では、その理由は何だったのか。

 次ページでは、各社の四半期増収率の推移を紹介するとともに、アステラス製薬が業績予想を下方修正した背景について解説する。