また、テレワークは、理屈上できることが分かっていても、主に管理職世代の反対によって実現しなかったが、コロナ感染の防止という大義名分を得て方々で実施されることになり、多くのビジネスパーソンがこれに慣れた。

 これまでなら出張が必要だった業務も、オンラインで済ませる方が合理的だといったケースが広く現れて、仕事が味気ないくらいに効率化してコストの節約が図れるようになった。

 動画の海外Z世代女子が、いくら物怖じしない合理主義者でも、現実にテレワークが可能で、それで仕事が機能するケースが多いことを見て知らなければ、「テレワークなら17時ピッタリに仕事を終えられるのでいい」と自信を持って言えなかったに違いない。

 わが国では、テレワークが減ってオフィスに出勤することを常態とする企業が増えているが、「テレワークの方が合理的ではないか」との不満を抱えている社員は少なくないだろう。

Z世代女子の言う通りにしたら?
片道1時間半の通勤に合理性はあるか

 動画のZ世代女子の考えに対して批判的な向きは、典型的には次のように思うのだろう。

 会社は出勤を求めている一方で、自分は安定した雇用と給料が欲しいのが現実なのだから、無理のない限り、会社の要求に適合するように努力するのが会社員としては当然だろう。給料の大きな部分は我慢料なのだから。嫌なら、今の会社を辞めて、別の会社へ行くなり自分でビジネスを起こすなりするといいではないか。会社に文句を言うのは、お門違いだ。

 Z世代女子も、案外この点を分かっているのかもしれず、「これ以上長く働くのなら会社を辞める」と言っている。会社を辞めるということが、彼女にとってそれほど重大事ではないのかもしれないし、彼女自身が何とかなるという楽観を持っているのかもしれない。

 だが、ここで考えてみよう。仮に、テレワークで仕事が可能なのだとした場合、社員が片道1時間半を掛けて通勤することに合理性はあるのだろうか。

 会社は8時間分の労働に対して給料を払っているつもりだが、社員は11時間の拘束と疲労に対して給料をもらっている。どこかに無理がある。