イーロン・マスク氏の独裁的な経営で名称はXとなり、ユーザーを置き去りにした“改悪”を連発して物議をかもしている旧Twitter。多くの人のメインプラットフォームとして長年機能してきたこのSNSが、なぜ凋落(ちょうらく)をたどるのか? 社会問題について発信するZ世代のアクティビスト(活動家)たちの視点から掘り下げていく。(ジャーナリスト 猪股東吾)
Z世代とTwitterと「心理的安全性」
そもそもZ世代(※)にとって、すでにTwitter(現在はX、本稿では改名以前の話が多いためTwitterで統一する)は、メインのSNSと呼ぶにはふさわしくないことが、複数のZ世代のアクティビストたちに話を聞いてわかってきた。
※本文中では1995〜2015年生まれ、現在の8歳から28歳と定義する
Z世代にとってTwitterは、アニメやアイドルなどの趣味の領域や、鍵垢(公開範囲を制限したアカウント)で愚痴をつぶやくという個人的な使用法がほとんどで、発信の場というより受信の場として機能している。
この背景には、Twitterがイーロン・マスク氏に買収される以前の段階で、炎上や過剰な論戦など他人をとがめるプラットフォームになり、距離を置かれていたことが挙げられる。デジタルネイティブである彼ら・彼女らにとってTwitterは、上の世代の匿名の人々の争いを眺め、できるだけそれに巻き込まれないようにする場として認知されていたようだ。
この感覚を理解するためには、「心理的安全性」という概念の理解が必要だ。
この「心理的安全性」について、Z世代は感覚的に「治安」と表現したりする。
「治安」の悪いTwitterから、比較的「治安」の良いInstagramに人々が流れるのは当然である。また2016年に「24時間で消えるストーリー機能」が実装され炎上や批判のリスクがより軽減されたことで、InstagramはZ世代のメインSNSに定着したといえる。