もちろん、同じ会社での労働が「サービス残業」にならないように、会社側を厳しく管理する必要がある。この点、テレワークは記録が残るので、本来ごまかしが利かない。会社側の不当労働行為を労働基準監督署(労基署)等の第三者がチェックすることも、労働者本人が訴えることも容易なはずだ。
また、上記では、勤務時間内の生産性は同じだと仮定したが、通勤の疲れがない身体や頭の方が生産性は高いはずだ。特に勤務時間が長い場合には、通勤時間の長短は睡眠時間に影響するので、生産性への影響はより実感しやすいだろう。
テレワークで浮かせた通勤時間分を全て生産活動に回す必要はない。しかし、その時間の一部が生産に割かれるなら、労働者1人当たりの付加価値への貢献は増大する。
メリット(2)
業務プロセスの合理化
テレワークを働き方の標準とすると、管理職も含めて、誰がどのように時間を使って、どのような貢献があったのかが記録に残る。この記録データは、経営を改善する上で貴重だ。
経営学者ピーター・ドラッカーの名著『経営者の条件』にあるごとく、知的労働者(ドラッカーの言葉で「エグゼクティブ」)は自分の時間の使い方を記録し、振り返ることが仕事のやり方を改善する上で有力な手段だ。テレワーク中心の業務システムは、個々の労働者や管理職、経営層それぞれの時間の使い方を可視化しデータ化する。これらのデータを分析することは、AI(人工知能)を含む今日の技術で十分可能だろうし、改善のための提案も半ば自動化できるだろう。
例えば、古来批判の多い社内会議の無駄は、会議の出席者の会議への関与度合い、会議に出席した時間の機会費用(その間仕事が進まないことのマイナス)などを考慮して改善できるはずだ。事前の会議内容の連絡と、結果の連絡だけで十分なメンバーを割り出すことができれば、会議への無駄な出席は減る。
こうした業務プロセス分析で、最も多く改善の余地が見つかり、仕事の効率性向上が求められるのはおそらく管理職だろう。配下の部下にどの程度効率的に仕事をさせているかどうかは、一目瞭然に分かるはずだ。