自分自身に関する情報を共有すると高揚感がもたらされる

 ソーシャルメディアで自分の感情を公開し、その自己演出の文化に加わることに、それほど多くのチャッター誘発効果があるとすれば、なぜ私たちは情報の共有をやめないのかという疑問が湧くのは当然だ。それに対する一つの答えはトレードオフに関わっている。

 このトレードオフはたいてい、一時的に気分が良くても、時間とともに負の影響が出てくる行動をとる際に生じる。研究によれば、誰かに魅力を感じたり、好みの物質(コカインからチョコレートに至るあらゆるもの)を摂取したりするときに活性化するのと同じ脳回路が、自分自身に関する情報を他人と共有するときにも活性化することがわかっている。

 とりわけ説得力のある説明の例として、2012年にハーヴァード大学の神経科学者たちが発表した研究がある。それによれば、人間はお金をもらうよりも自分自身に関する情報を共有するほうを好むという。言い換えれば、「社会的高揚感(ソーシャルハイ)」は、ドーパミン受容体への心地よい刺激である「神経的高揚感(ニューロナルハイ)」に似ているのだ。

 要するに、ここで言いたいのは、オンラインであれオフラインであれチャッターに駆り立てられるままに社会的行動をとれば、往々にしてさまざまな悪い結果を招いてしまうということだ。

 内向きと外向きの双方の会話がもたらす悪い結果として、最もダメージが大きいのは、多くの場合、自分へのサポートがやがては減ってしまうことだ。こうして社会的に孤立すると、それによってさらに傷つくという悪循環に陥ってしまう。

 実際、注意して耳を傾けてみると、多くの人が他人に拒絶されたときの気持ちを表現するのに、肉体的な「痛み」という言葉を使っているのがわかるだろう。

 イヌクティトット語からドイツ語、ヘブライ語からハンガリー語、広東語からブータン語に至る世界中の言語において、人びとは感情的な痛みを表現するのに肉体的な損傷に関わる言葉を用いる――「壊れた」、「傷ついた」、「ケガをした」などなど。

 彼らがそうするのは、隠喩表現の才があるからというだけではない。私が自分のキャリアにおいて発見したぞっとする事実の一つは、チャッターは人の感情を傷つけるだけではないということだった。私たちの身体にも影響を及ぼすのだ。その範囲は肉体的な痛みの感じ方から、細胞内での遺伝子の働き方にまで至るのである。