老朽化による工事費増だけじゃない
修繕積立金が不足する理由
先日、国土交通省(国交省)が「マンションの長期修繕計画の目安となるガイドラインを改める」とのニュースが報じられた。背景にはマンションの性能を維持し、長期的なメンテナンスを行うにあたって必要となる「修繕積立金」の増額幅が大きくなっていることが影響している。長期修繕計画を見直す中で、必要となる費用が増え、住民の合意形成ができない事態に陥る場合が増えているのだ。結果、工事に必要な資金が不足してしまう事態が生じているという。
ストックマンションがどんどん増える中、高経年マンションの老朽化が進んでいる。高経年マンションは修繕により多くの費用を要するのは当然だ。
2022年4月に導入された「マンション管理計画認定制度」も、修繕積立金の見直しに関係している。この制度は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」に伴いスタートしたものだ。マンション管理が一定の基準を満たしていると評価されれば、適切な管理計画を持つマンションとして認定が受けられる。管理が行き届いているマンションと評価されれば資産価値の向上にもつながる。
この制度の認定を受けるためには、マンション管理組合が主体となり長期修繕計画の見直しなどを実施した後、自治体に申請する必要がある。認定基準を満たし、評価を得るためには長期修繕計画に関しても見直しが必要となる管理組合が多い。
また、「修繕積立金総額に基づいて算定された修繕積立金平均額が著しく低額でない」ことが認定基準に含まれているため、認定基準に適合するべく修繕積立金を見直した結果、増額になってしまうケースは少なくない。
さらに、マンション管理業協会の評価制度として「マンション管理適正評価制度」もスタートしている。こちらもマンションの管理状態や管理組合の運営状況を評価する制度で、評価カテゴリーごとにポイントで点数が付くシステムだ。管理組合収支についても評価項目があり、修繕積立金の設定も評価対象となる。
このように管理状態の「見える化」によってマンションが評価され、引いては将来的な資産価値にも影響することが想定される中、修繕積立金設定の考え方が問われていることも増額要因として考えられるだろう。