アベノミクスにおける金融緩和によって、銀行の融資条件が下がり、サラリーマンを中心に不動産投資ブームが起きた。だが、初心者は食い物にされるのが投資の世界。不動産業者や有名投資家が振りまく魅力的な文句に乗せられることなく、自分自身で知識を得ることの大切さを知ろう。本稿は、大村昌慶著『完全版 不動産投資の嘘』(幻冬舎メディアコンサルティング)の一部を抜粋・編集したものです。
有名投資家たちが語る
成功方法は万人向けか
自身の成功体験をもとに、本を出版している有名投資家さんは数多くいます。その投資家のやり方を真似すれば、あたかも成功できそうに思えますが、それは大きな誤解です。
まず、次の2点をしっかり考えてください。
(1)「その投資法で本当に成功しているのでしょうか?」
(2)「その投資法は再現性があるのでしょうか?」
有名投資家の実績や数字の出し方には偏りがあります。例えば「利回り20%超え」などといった、初心者からすると、「羨ましい!」「すごい!」と驚くような数字が並んでいますが、それは満室想定ではないでしょうか。
満室想定というのは、読んで字のごとく「満室になったときの想定家賃」です。つまり、その物件が満室稼働していなければ、その利回りになりません。いくら利回りが高くても、稼働率が伴っていなければ意味がないのです。
また、その利回りは表面利回りでしょうか。それともFCR(真実の利回り)でしょうか。
その多くは表面利回りで、場合によっては、その物件を維持するためのランニングコストを加味せずに、利回り計算されていることもあります。
さらに、その物件の融資条件と出口戦略はどうなっているのでしょうか。融資期間や金利の条件により、ローン支払いが多く、キャッシュフローが出ていない場合もあります。
仮にキャッシュフローが出ていたとしても、1年で見ているスナップショット(単年)であり、出口までシミュレーションしたビデオ(出口までの通年)で見てみると、投資として合ってない場合もあります。
次に、再現性というのは、その有名投資家の手法を実際に自分でもできるのか、ということです。
よくある例を挙げれば、「8500万円の物件を7500万円に指値した」というのは、交渉術に長けた有名投資家だったからであり、そういった交渉は誰もが成功するものではありません。
もしくは、その当時の市況はどうだったのかというのも重要です。数年前の不動産投資ブームのような全体的に高くなっている相場と、リーマンショック直後や東日本大震災直後、今回の新型コロナウイルスの影響を受けている状況では、まったく変わります。
カリスマといわれる投資家のなかには、今のようにサラリーマンが簡単に融資を借りられない状況のなか、自らの手で銀行開拓をして買い進めていた投資家も多いのです。
借りられない状況だからこそ、良い物件が安く買えている、そんな事情もあります。そのやり方をそのまま真似ても、うまくいく可能性は低いと思います。また、年収や金融資産、家族構成や背景もまったく異なります。