QRコード決済でシェア7割を握り、キャッシュレス市場を完全掌握したPayPayの次の展開が注目されている。特集『異業種 銀行侵入の衝撃』(全5回)の#2では、PayPayの知られざる普及戦略と、次のターゲットを明らかにする。(ITジャーナリスト 鈴木淳也)
PayPay、キャッシュレス決済市場の70%支配を完了
表から見えない躍進の秘密と次の展開
スマートフォン決済サービスPayPayが好調だ。2023年10月にはサービス開始から5年で6000万会員達成を発表。日本人口の約半数をカバーした。
PayPayを運営するLINEヤフーは、バーコードやQRコードを用いるコード決済の分野では楽天ペイ、au PAY、d払いなどの競合を大きく引き離し、約67%のシェアを押さえたと公表している。さらに「どれだけ決済に用いられたか」という決済回数の指標に目を向けると、キャッシュレス決済市場における存在感の大きさが分かる。
22年に利用されたコード決済と電子マネー、クレジットカードなどを含めたキャッシュレス決済全体において、金額ベースではコード決済が全体に占めるシェアは7.1%にすぎないのに対し、決済回数ベースでは、シェアは約24%となっているのだ。
コード決済におけるPayPayのシェアから単純計算すると、あらゆるキャッシュレス決済の6回に1回はPayPayが利用されていることを意味する。近ごろ、街中で「PayPay」の決済音を聞く機会が増えたと感じないだろうか。
日本政府は国内におけるキャッシュレス決済普及のためにさまざまな政策を進めているが、この一翼を担っているのはPayPayだと言っても過言ではない。日本のキャッシュレス決済市場を席巻し、数々のキャンペーンやテレビコマーシャルで世間をにぎわせ、株式上場まで目指すという派手な側面が目立つが、その実態や将来像はあまり知られていない。
次のページでは、“表の顔”からは見えにくい同社躍進の秘密や、PayPayの巨大会員をベースにした次なる戦略に迫っていく。