人口減少と地域経済の停滞で店舗やATMのコストが重くのしかかる地方銀行。銀行の低PBR(株価純資産倍率)も問題となっている。だがピクテ・ジャパンの大槻奈那シニア・フェローは、再編は必ずしも解決策にはならず、生き残るための“ウルトラC”があると力説する。特集『異業種 銀行侵入の衝撃』(全5回)の最終回では、そんな大槻氏のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 金山隆一)
地銀の経営課題は
再編では解決しない
――人口減少と地域経済の低迷にあえぐ地方銀行に、異業種の銀行参入や電子決済などフィンテックの波が押し寄せています。
人口減少は地銀にとって最大の経営課題です。マネーの3要素、決済・貯蔵・尺度。このうち、尺度とはモノの価値を測る機能ですから、それ自体でもうけるというものではないでしょう。一方、決済は、少なくとも個人については、カード会社やPayPayなど電子決済に奪われつつあります。預金の機能も、ネット銀行やBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)などによる預金獲得の動きが脅威ですし、将来的にデジタル給与払いが進めばその役割は一層低下するかもしれません。
このように、マネーの本源的な機能における旧来型の銀行の果たす役割は低下していることから、マネーを動かすこと、すなわち融資で収益を得ることの重要性が一層増しています。このような背景から、人口減少と企業数の減少は地銀の経営に重くのしかかっています。
――再編を進めるしか生き残りの方法はない?
再編はツールの一つ。最も強力なツールの一つですが、わが身を犠牲にする面もあります。再編しても経費率が下がらず効果が得られないケースもある。過去の再編の例を見ると、ホールディングカンパニーの下に二つの銀行が収まり、2人だったトップが3人になり、経費が下がらないということもありました。
――再編以外に地銀が生き残る方法はありますか。
菅義偉前政権時代、金融再編は政策の目玉として掲げられた。そのため再編こそ、地銀各行が直面する人口減少と高齢化による地元経済の地盤沈下などの課題を乗り越える、最も有効な手段だと捉えられてきた。ところが大槻氏はそれだけではないと言う。具体的にはどのような施策があるのだろうか。次ページで、その内容を聞いた。