「過去→未来→現在」の順で考えよう

佐宗 MH語ノートはどんなふうに使っているのでしょう?

山崎 MH語ノートに掲載された言葉には定義が書かれていないので、自分で書き込む必要があります。だからこそ、社員たちはその言葉を自分なりに考え続けることになります。

また、「MH語ブレックファースト」という場も設けています。半年に1回、みんなでそれぞれの言葉について、自分の考えや解釈を語り合うわけですね。お互いの解釈を聞いて、気づいたことや思い出したエピソードを話したり、言葉と日々の業務を紐づけて共有し合ったりします。これはアルバイトも含めて全員参加で行なっています。

このMH語ノートのプロジェクトでぼくが意識してきたのが「過去を大事にすること」です。佐宗さんも『理念経営2.0』で、企業の歴史=ヒストリーが理念経営にとってきわめて重要だと書かれましたよね。まず自分たちの過去を振り返り、それから未来のビジョンを描くことで、ようやくいま現在、自分たちがやるべきことが見えてくる、と。

ぼくも以前からまったく同じことを考えていて、「過去→未来→現在」の順で考えることが大事だと話しています。「どうしてこの言葉がマザーハウスのなかで流通しているのか?」──その過去をみんなにちゃんと伝えることが、ぼくの役割なんですよね。

佐宗 それぞれのMH語の成り立ち、背景を話すことで、企業の歴史を振り返るわけですね。すごくおもしろい方法だと思います。MH語ノートのプロジェクトをやってみて、社員のみなさんや店舗のみなさんの反応はどうでしたか?

山崎 はっきり言えば「普通」です(笑)。別に劇的に変わったことはないし、普通としか言えないですね。佐宗さんも対談の場だからそういう質問をしてくださったんだと思いますが、経営者の立場からすればなんとなくおわかりですよね。

佐宗 まさに! リアルですね。

山崎 企業文化の醸成って、何か1つの施策でいきなり実現できるような簡単なものではないです。マザーハウスではMH語ノートのようなダイレクトに伝えるツールと、ソフトに伝えるツールを合わせ技でやっているので、それでじわじわと文化が醸成されているのだろうと思います。

佐宗 合わせ技があるのですね。次回はその方法について教えてください。

職場に共通言語がある会社、みんなの言葉が通じない会社、その違いとは?

(次回に続く)