退職日をどう定めるかは会社の就業規則で決まっているが、法律で決まっているわけではない。そのため、本人の希望に添い、柔軟に運用してくれる企業もある(写真はイメージです) Photo:PIXTA
値上げラッシュや年金額の実質目減り、退職金増税など、老後の家計に打撃を与えるニュースが日々報じられ、老後不安をおぼえている人も多いのではないでしょうか。定年前後には、お金に関してたくさんの選択を迫られます。定年後の生活を大きく左右する選択も少なくなりません。でも、知識があれば大丈夫。正しい選択や損をしない選択、そして自分に最適な選択を、確信を持ってできるようになります。気鋭のファイナンシャルプランナー森田悦子さんの著書『定年前後のお金の選択』(青春出版社)から、退職金の気になる疑問にお答えします。
退職金の税制が変わる!早めにもらったほうがトク?
厚生労働省の調査によると、従業員が30人以上の企業の約8割が退職金の制度を持っています。退職金も本来は、給料やボーナスと同様に課税対象になりますが、退職金は公的年金と並んで老後の生活の基盤となるお金です。そのため、税金を軽減できるしくみがあります。
本来は、支給額に応じて5~45%の税が課されるところを勤続期間が長い人ほど非課税となる枠(控除)が多くなり、支払う税金が少なくなるのです。これを「退職所得控除」といいます。

勤め上げることが有利でなくなる可能性も
退職所得控除は20年を超えて勤めた人の優遇幅が大きくなっています。控除額は勤続20年までは1年につき40万円、20年を超えると年70万円に増額されます。たとえば、同じ企業に20年勤めた人なら800万円まで、40年勤めた人であれば2200万円までは非課税で退職金を受け取ることができます。
そもそも勤続年数が長いほど有利になるしくみは終身雇用を前提としており、転職を妨げ、雇用の流動化を阻害していると指摘されてきました。そこで政府は「経済財政運営と改革の基本方針2023」で、勤続年数による税優遇の格差を是正するとしています。このため、今後は長く勤めた人の優遇がなくなったり縮小したりする可能性もあります。
ただし、個人の老後の生活に大きくかかわる税制のため、当面はなんらかの経過措置が設けられ、事実上は現行制度がしばらく継続する可能性が高いと考えられます。現行制度では同じ会社に21年以上勤めた人が退職金の税では有利になりますが、税制の改正やその内容については、最新情報をチェックするようにしましょう。
退職日を1日でも遅らせると、退職金の「手取り」が増える?
退職所得控除は勤続年数が長いほど大きくなって税金を減らせるため、退職金の手取りを増やすことが可能です。20年勤めれば800万円までは無税で、21年なら870万円、22年なら940万円と、1年長く勤めるごとに70万円の控除額が追加されていきます。
勤続年数の数え方は切り上げなので、1年に満たない端数は1年と数えて計算します。このため、20年と1日勤めた人は21年とカウントされ、退職所得控除をより多く受けることができ、退職金の手取りが増えることになるのです。







