勤め上げることが有利でなくなる可能性も

 退職所得控除は20年を超えて勤めた人の優遇幅が大きくなっています。控除額は勤続20年までは1年につき40万円、20年を超えると年70万円に増額されます。たとえば、同じ企業に20年勤めた人なら800万円まで、40年勤めた人であれば2200万円までは非課税で退職金を受け取ることができます。

 そもそも勤続年数が長いほど有利になるしくみは終身雇用を前提としており、転職を妨げ、雇用の流動化を阻害していると指摘されてきました。そこで政府は「経済財政運営と改革の基本方針2023」で、勤続年数による税優遇の格差を是正するとしています。このため、今後は長く勤めた人の優遇がなくなったり縮小したりする可能性もあります。

 ただし、個人の老後の生活に大きくかかわる税制のため、当面はなんらかの経過措置が設けられ、事実上は現行制度がしばらく継続する可能性が高いと考えられます。現行制度では同じ会社に21年以上勤めた人が退職金の税では有利になりますが、税制の改正やその内容については、最新情報をチェックするようにしましょう。

退職日を1日でも遅らせると、退職金の「手取り」が増える?

 退職所得控除は勤続年数が長いほど大きくなって税金を減らせるため、退職金の手取りを増やすことが可能です。20年勤めれば800万円までは無税で、21年なら870万円、22年なら940万円と、1年長く勤めるごとに70万円の控除額が追加されていきます。

 勤続年数の数え方は切り上げなので、1年に満たない端数は1年と数えて計算します。このため、20年と1日勤めた人は21年とカウントされ、退職所得控除をより多く受けることができ、退職金の手取りが増えることになるのです。