「メモ=情報を忘れないために書くもの」と思ってはいないだろうか? 実はメモは、「考えること」を助ける強力な武器にもなる。そのノウハウが紹介されているのが『考える人のメモの技術』。著者の下地寛也氏は日本で一番ノートを売る会社・コクヨに長年勤務し、書くことに真摯に向き合ってきた。本書にはそんな下地氏が、一流のビジネスパーソン・クリエイターたちのメモを収集・分析し、発見した「書くこと」を通して「自分なりの答え」を出す方法が紹介されている。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「メモの技術」とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)

考える人のメモの技術Photo: Adobe Stock

「コメント力」が求められる時代

「自分なりの独自の考え方」が必要とされる時代になった。SNS上で意見を言うことが自分自身の存在意義になりつつあるからだ。

 特に「コメント力」は重要だ。シンプルな短い言葉のなかでオリジナリティを表現できる人は魅力的に映る。このことは多くの人が納得するのではないだろうか。

 では、「自分なりの言葉」を生み出すにはどうしたらいいのだろう。その答えは「メモをとる」ことである。

メモって、「必要な情報を忘れないためにとるもの」と考えている人も多いと思いますが、実は「考える力」を引き出すためのとても大切な武器になるんです。(P.20)

 メモによって考えることができ、コメント力も向上するのだ。

メモを生かしきれていない人は多い

 メモが思考を加速させる「アクセルの役割」を果たすことはあまり知られていない。

 書くことで思考が具体化し、メモし続けることでさらに思考を深めることができる。

 しかし、メモをとることに「苦手意識」を持っている人もいるのではないだろうか。

 試してもなかなかうまく書けないし、習慣化しようとして挫折した経験を持つ人は多いだろう。

 私自身、手帳に思いついたことを書きつけたり、セミナーや講座に参加して大事なことをメモをしたりする。しかし、書いたものを見直すことはほとんどなく、「メモなんてとっても意味ないよ」と思う側の人間であった。

メモで「考える習慣」を身につけられる

 本書の著者である下地寛也氏は、ちょっとしたコツをつかめばすぐにメモを書けるようになるという。

 同時に、メモによって考える習慣を身につけられると強調する。

 情報はネットで検索すればすぐに手に入る時代。メモなんて必要ないと思う人もいるかもしれない。

 しかし、情報を受け取るだけでは「思考停止の状態」である。その時点では、まったく情報を活かしていないということに気づいて欲しい。

 大事なのは、外部から入ってきた情報を自分の考え方と組み合わせて、自分独自の意見やアイデアという形にすることである。

つまりメモは、外から入ってきた他人の情報だけではなく、内なる自分の頭にある価値観や経験から来る考えを引っ張り出す役割を担っているわけです。
メモはそういった「考える」ための必須の道具であり、その技術は自分を変え、世界の見方を変え、人を変える強力な思考の相棒だということをお伝えしたいと思っています。(P.22)

「メモをとること」=「考えること」

 一般的に、メモというと記録しておくものという認識しかないが、実は考えるためにとても大事な道具なのである。

その1つは、普段から気づいたことをメモする習慣をつけること。
もう1つは、紙の上にメモを書きながら考える習慣をつけること。(P.22)

 しかも、「ただ考える」だけではなく「自分らしく考える」ことができるようになるという。

 自分の考えを見える化して、思考を深めていくためにメモをとるのである。

厳しい言い方かもしれませんが、もしメモを書けないなら、それは考えていない証拠です。考えているからメモの手が進むのです(P.29)

 メモは手で書くことであるが、考えるためには試行錯誤しなければならない。そのためには書いては考え、考えては書くという試行錯誤が必要になる。

 まさにメモを書くことは「考えること」なのである。