「職場でハラスメントを受けた」
経験がある人は6割以上

 アンケート結果によれば、「これまで職場でハラスメントを受けたことがありますか?」という問いには、62%が「ある」と回答した。年代別でみると、40代以上が69%で20代の47%より22ポイント高く、年代が高い方ほど、ハラスメントを受けた経験があることが分かる。男女別では、男性63%、女性60%とほとんど差はない。

 職場でハラスメントを受けたことがある人への「職場でどんなハラスメントを受けましたか?」という問いには、トップは「パワハラ」(90%)だった。男女別でみると、女性は男性に比べて「セクハラ」(男性:5%、女性:39%)と回答した人が多い。

 また、職場でハラスメントを受けたことがある人に「誰かに相談しましたか?」と聞くと、トップは上司(31%)だった。相談をして解決した例として「別の上司に報告し同僚や先輩に守ってもらいながら人事に掛け合ったところ、パワハラしていた上司は左遷された」(24歳男性)、「店長が、該当者とシフトが被らないようにしたり、2人きりにしないなど工夫してくれた」(25歳女性)などのエピソードが寄せられた。

 一方で「誰にも相談していない」(31%)も同率で最多だった。その理由のうち、71%が「相談しても解決にならないと思ったから」と回答している。

「現在の職場ではハラスメント対策を実施していますか?」という問いには、「実施している」が41%、「実施していない」が33%という結果になった。

 業種別でみると、「実施している」という回答が多かったのは「金融・保険」(69%)が最多だった。次いで「官公庁・独立行政法人・団体」(54%)が続く。「実施していない」のは「商社」(46%)、「不動産・建設・設備」(45%)という結果だった。ハラスメント対策のための具体的な取り組みは「相談窓口の設置」(79%)が最多だった。

管理職のパワハラに対する
「認識・理解が低い」が最多

 では、なぜパワハラはなくならないのか、エン・ジャパンが運営する人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』を利用している企業の人事担当者を対象に「パワハラ対策」についてアンケートを行った。497社から回答を得て、22年3月に公表した調査結果を基に分析する。

 パワハラ対策の実施の有無を聞くと、66%が「行っている」と回答。企業規模が大きくなるにつれ、パワハラ対策の実施率も上がるようだ。具体的なパワハラ対策の実施内容は、第1位が「社内に相談窓口を設置」(80%)、次いで「就業規則に罰則規定を設ける」(56%)、「パワハラの対策方針の明確化」(45%)と続く。

 パワハラ対策を進める上での課題は、トップ3が「管理職のパワハラに対する認識・理解が低い」(55%)、「パワハラの基準・境界が曖昧」(43%)、「経営層のパワハラに対する認識・理解が低い」(37%)だった。それぞれの具体的なエピソードは以下の通りだ(業種/従業員数)。

■「管理職のパワハラに対する認識・理解が低い」と回答した人の理由

「管理職によるパワハラがあっても、注意できる立場の経営者の認識が低く、抑止が難しい。昔なら当たり前、などと言われてしまう」(不動産・建設関連/10~29人)

「パワハラをしても刑罰等一切咎められることなく昇進していくため、社内の士気が下がってしまう」(IT・情報処理・インターネット関連/100~299人)

■「パワハラの基準・境界が曖昧」と回答した人の理由

「暴力行為等は見てはっきりとわかるが、言葉によるパワハラは意識の問題となるため、明確な線引きが非常に難しい。例えば、指導や注意のつもりでも、受け取る側ではそれがパワハラと受け止められてしまうケースもある」(メーカー/30~49人)

「協力会社間でのハラスメントについての解決方法について、指標などがあれば良いと思う」(不動産・建設関連/1000人以上)

■「経営層のパワハラに対する認識・理解が低い」と回答した人の理由

「パワハラのある会社は、経営、管理側が古い考えを維持していることが多いと感じる。経営層が率先して悪い社風を認識し、時代が変わったと認めることから対策は始まると思う」(不動産・建設関連/1~9人)

「経営者層にパワハラ気質がある。それを受けた幹部層の一部がパワハラの認識なく部下へパワハラをしてしまう現状がある」(広告・出版・マスコミ関連/300~999人)

 企業のパワハラ対策として、大手企業が先行するかたちで相談窓口の設置や管理職への研修実施は増えた。また、嫌がらせを受けた側が声を上げる機会も、口コミサイトやSNSなどネットの影響で増えてきた。内情が世の中に漏れやすいことが、特に大手企業においてはハラスメントの抑止力になる面はありそうだ。

 とはいえ、今なお続くパワハラに対し、特に管理職が認識・理解を高め、事実の隠蔽(いんぺい)などをしないようにしなければ、パワハラを根絶することは難しいだろう。