北海道、広島、熊本…日本国内で
半導体大型プロジェクトが増えるわけ
今からちょうど2年前の2021年11月、TSMCはソニーグループやデンソーと共同で、熊本県に第1工場を建設すると発表した。それをきっかけに、わが国の半導体関連分野では、工場建設や事業拠点の拡充など大型プロジェクト発表が相次いでいる。
経済、安全保障、環境などあらゆる場面で、戦略物資として半導体の重要性が急上昇している。ChatGPTをはじめとした人工知能の深層学習などに欠かせない、画像処理半導体(GPU)の需要は急増し、供給が追いついていない。
台湾の地政学リスクも高まった。世界の主要企業は、先端分野のチップ供給をほぼ一手に握るTSMCへの依存を、これ以上高めることはできない。台湾に生産拠点が多いTSMCも、リスク分散のため拠点を分ける必要に迫られている。そうした環境変化に対して、日米欧は産業政策を修正し支援体制を強化している。
わが国で生産能力増強に取り組む主要半導体メーカーは増えた。広島県では米マイクロン・テクノロジー、三重県ではキオクシアと米ウエスタンデジタル、宮城県ではSBIホールディングスと台湾の力晶積成電子製造(PSMC)が工場の建設・拡張に邁進している。
より高性能な半導体の設計、開発、製造を目指す動向も活発だ。ラピダスは、仏レティや、経済産業省が創設し東京大学などが参画する最先端半導体技術センター(LSTC)と連携し、1ナノメートルクラスの半導体開発の基礎技術、その製造技術開発にも取り組む。
2ナノのロジック半導体を設計する技術を開発したIBMは、ラピダスに提携を求めた。そうした最先端半導体の設計・開発体制の強化は加速しているが、課題は、どこで、どの企業が製造するかだ。台湾の地政学リスクが高まり、自国企業や同盟国企業との関係強化が重要視される中、主要先進国の企業・研究機関は、日本の半導体関連企業にいっそう期待している。今回のラピダスとレティの連携は、まさにそうした機会になったといえるだろう。