電力、水、人材がボトルネックに
TSMCの電力消費量はスリランカを上回る!?

 今後、わが国は総力を挙げて多くの課題=ハードルを越えなければならない。おそらく、主たるハードルは電力、水などのインフラに加えて優秀な人材だ。

 半導体の製造は、大量の電力を消費する。特に、回路の線幅をより細くする微細化に伴い、半導体メーカーの電力消費は急増した。回路線幅5ナノメートルなど先端の半導体製造に用いられる極端紫外線(EUV)を用いた露光装置の消費電力は、1世代前の装置の約10倍も多いといわれる。TSMCの電力消費量は近いうちにスリランカ一国のそれを上回るとの予想もある。

 電力に関して、ラピダスは再生可能エネルギー由来の電力を用いたグリーン工場の運営を目指している。なお、工場が本格稼働した場合、ラピダスは北海道の電力需要の1~2割を占める可能性がある。

 半導体工場の建設・拡張が進む他の都道府県でも、電力需要は高まるだろう。半導体メーカーは自家発電を強化しつつ、安定的な電力調達体制の確立を目指さなければならない。各地の電力会社は、脱炭素に対応した発送電能力の強化などに向け、設備投資を積み増す可能性も高い。

 半導体工場は、超純水などの水も大量に消費する。規模にもよるが、半導体工場1つが一日に消費する水の量は20万トンに達するともいわれる。水道水でいえば67万人程度をカバーする量だ。超純水の精製にも、電力が欠かせない。

 近年、世界的な異常気象により、台湾では水不足が発生した時期もあった。そうしたリスクに対応するためにも、TSMCは水資源が豊富な熊本県を選んだと考えられる。ラピダスは苫小牧地区の工業用水道から水を調達する方針だ。

 また、台湾の力晶積成(PSMC)は、電力利用、給排水、物流など総合的な条件を勘案して宮城県を工場建設地に選んだ。楽観は早計だが、電力と水のボトルネックに関して、事業の運営に向けた一定のめどは立ちつつあるだろう。