三つどもえの台湾総統選挙
中国の介入は実らず

 まず、1月13日に行われる台湾総統選挙だ。今回の総統選挙は、「台湾のことは台湾人が決める」と、中国に対し毅然(きぜん)とした態度を貫いてきた民進党・蔡英文総統の後継を決める重要な選挙になる。

 すでに、11月24日に立候補の届け出が締め切られ、与党・民進党が擁立した頼清徳氏(64)、中国との関係改善を重視する最大野党・国民党の侯友宜氏(66)、そして、第3勢力として台頭してきた民衆党の柯文哲氏(64)の三つどもえの戦いになることが決定した。

 世論調査の支持率で30%台半ばを記録し、常にトップを走ってきたのが頼氏。対する侯氏と柯氏はそれぞれ20~25%前後の支持率であったため、「野党が分裂したままでは負ける」と、「棄保」(共倒れを避けるため、勝てそうな候補に一本化する)を目指す作戦に出た。これが裏目に出る。

 仲介したのは、親中派とされる馬英九前総統だ。馬氏は、11月2~5日に北京を訪れた側近を通じ、民衆党に譲歩するよう国民党に迫った。国民党内で馬氏の影響力は今なお大きく、同15日には、馬氏が同席する中、両党が一本化に向けて交渉を本格化させ、複数の世論調査を比較して統一候補を選ぶことで合意したのである。

 ただ、この交渉は決裂した。世論調査のどの部分を見て判断するのか意見が対立したほか、立候補届締め切りの前日、侯氏と柯氏の交渉の場に、柯氏が「誰も連れてくるな」と要望したにもかかわらず、侯氏が馬氏と国民党の朱立倫党首を連れてきたためだ。これに柯氏側が猛然と反発し、「藍白合作」(藍=国民党、白=民衆党のイメージカラー)は破談となってしまった。

 この流れからすれば、頼氏が圧倒的に有利になる。民進党は頼氏でまとまる半面、野党側は2候補に分裂してしまうからだ。しかも馬氏の表舞台への登場は、明らかに「中国の選挙介入」によるものであり、そのことは頼氏の陣営やその支持者を結束させることになる。

 もっとも、台湾の美麗島電子報は、最新の世論調査(11月21日~23日実施)で、頼氏と侯氏が接戦であると伝えており、選挙の行方は予断を許さない。

 とはいえ、野党候補の一本化が成功せず、頼氏が勝つとなれば、侯氏か柯氏を通じて台湾統一への足掛かりを作ろうとした中国の習近平総書記は頭を抱えることになるだろう。