トランプ大統領が誕生すれば
岸田政権はさらに危うくなる
もう一つ挙げれば、2024年11月に行われるアメリカ大統領選挙だ。選挙は、民主党のバイデン氏と共和党のトランプ前大統領の再戦になる可能性が極めて高い。
問題は、最新の世論調査でバイデン氏を上回るトランプ氏が、長い選挙戦を制して大統領に返り咲いた場合だ。
トランプ氏による機密文書持ち出しや不倫などは日本にとってつゆほどの影響もないが、トランプ氏が再び大統領になれば、米中関係の悪化は避けられなくなる点はリスクだ。
トランプ陣営では、政権構想の立案を、側近のステファン・ミラー前大統領上級顧問らを中心に進めているが、その政策綱領を見ると、まず、最初に、「中国依存の通商路線からの脱却、中国に対する最恵国待遇の廃止」がうたわれている。
トランプ氏といえば、中国と激しい貿易戦争が記憶に新しいが、強硬な対中政策を掲げるトランプ政権が再び誕生した場合、米中関係はさらに悪化し、台湾だけでなく日本にも大きな影響をもたらすことになる。
こうした中、「外交の岸田」はどうだっただろうか。たとえば、イスラエルとハマスの戦争において日本の存在感を何か一つでも国際社会に示してきたか、そして、北朝鮮の「偵察衛星」発射に関して事前に強いメッセージを送ってきたか、と問われれば、その答えは「NO」だ。
アメリカ大統領選挙が実施されるころには、岸田首相ではないかもしれないが、岸田首相のままであったとすれば、習氏の専横を許すのみならず、トランプ氏が返り咲いた場合に実践するであろう「アメリカファースト」の外交政策に翻弄されることは間違いない。
(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)