「例えば、田村さんは投資先のBASEが上場しており、一定のキャピタルゲインも得ています。もっとスタートアップに投資していきたいそうなのですが、ひとりでソーシング(投資案件発掘)できる量には限りがある。であれば、エンターテインメントとスタートアップの両方を支援してきたFIREBUGが間に入り、エンターテインメント業界の第一線で活躍してきた個人や企業から資金を預かり、その資金をスタートアップに投資していく仕組みをつくればいいと思いました。それで今回、ファンドを組成することにしたんです」(宮崎氏)

1号案件はタレントにビデオメッセージを依頼できる“日本版Cameo”

WONDERTAINER FUNDが1号案件として投資したのはレターファンだ。同社はタレントにビデオメッセージを依頼できるサービス「レターファン」を運営する、いわゆる“日本版Cameo”とも言えるスタートアップだ。Caemoの運営元であるBaron Appは2017年の設立から約4年で評価額は10億ドル(約1100億円)を超え、ユニコーン企業の仲間入りを果たしている。2020年の1年間で130万以上の動画メッセージが作成されたという。

「海外で盛り上がりを見せているCameoも近々、日本に上陸してくるはずです。ただ、日本のエンターテインメント業界には独自のルールもあり、芸能事務所がきちんとハンドリングできる形でないとサービスが成立しないと思います。その点、レターファンは独立した個人が事務所を通さないパターン、事務所が事前にチェックするパターンの両方に対応できる仕組みがあります」(宮崎氏)

そうした点が国内でタレントにビデオメッセージを依頼できるサービスを展開する上では強みとなり、日本ではCameoよりもポジションが取れる、と見込んでいるという。

WONDERTAINER FUNDの投資額は1案件あたり、平均で約1000万円。宮崎氏は「合計20社に投資できたら」と語る。投資先の中から、一定のトラクションを獲得する企業が出てきたら、そこにフォローオン投資していく予定だという。

「エンターテインメントに関わるシード・アーリーステージのスタートアップの悩みの多くはビジネス開発です。芸能事務所、レーベル、著名人などKOLとのネットワークがないことから、なかなかサービスの導入が進まず、伸びないまま終わってしまうこともある。WONDERTAINER FUNDでは資金提供だけでなく、これまでに培ってきた著名人、IP、事業会社とのネットワークも活用して、スタートアップの支援にも取り組みたいと思っています」(宮崎氏)