人の話の受け止め方は十人十色、100人いれば100通りの解釈があるということは、何となく皆さんも普段感じているのではないかと思います。創業者の方は、その現実を自分に知らせるために、1on1をするのもよいと思います。

たとえばビジョンについてメンバーに話した後や、ミーティングで方針を伝えた後などに、自分の話がどのように受け止められ、理解されているかをフラットに聴く場を設けます。相手はメンバー全員である必要はありません。

1on1で聴いてみると、自分が伝えた話のどこにピンと来たか、全員のとらえ方や理解度がそれぞれに違います。創業者の方の中には、そのことにいら立ちを感じてしまうこともいるようですが、そこで怒ってしまうのは得策ではありません。また、そこで「自分の伝え方が悪かったのかな」と考えてしまう人もいますが、必ずしもそうではないかもしれません。

受け止める人が違えば相手が受ける印象というのは変わるものですし、同じ人でも元気な時と弱っている時とでは受け取り方も違うもの。自分がそういうチームと仕事をしているということを、自分自身にリマインドする場として、ぜひ、1on1を活用してもらえればと思います。そうすることで、組織が崩壊するようなことになる前に、予兆をキャッチすることができるという利点もあります。

スタートアップを率いていく立場である創業者の方は、どちらかと言えば「聴く」というよりは自分の強いビジョンを魅力的に伝えることで会社が回っている部分があるはずです。それを止めてまで「聴きましょう」というのも、ちょっともったいないことです。ただ、顧客から自分たちのサービスがどう受け取られているのかを確認するのと同じスタンスで、自分の語っていることがどう受け取られているかを1on1の場でメンバーから教わることは、何らかの意味のある時間となるのではないかと思います。

1on1を取り入れるタイミングは

一口にスタートアップと言っても、立ち上げて間もない企業から、ある程度イグジットが見えてきた企業までさまざまですが、急成長しているときのスタートアップは特に「聴く」ということを大切にするとよいと思います。それは成長が速い時ほど、あっという間に自分たちが大切にしてきた価値観やビジョンが共有されないという状況に陥るからです。

急成長期には、先月入社した人が今月入社するメンバーのオリエンテーションをする、というような状況になることもあり得ます。そこでメンバーの声を「聴く」ということを一層大事に考えてもらえばよいのではないかと感じます。