組織力の向上やイノベーションを生み出す源泉として今、「聴く力」の効用に注目が集まっている。組織に属する人にとって、聴くことの効用とは何か。組織で聴き合うことにはどんな意味があるのか。書籍『LISTEN──知性豊かで創造力がある人になれる』の監訳者で、社外人材によるオンライン1on1サービスを展開するエール取締役の篠田真貴子氏が、聴くこと・聴かれることが組織に及ぼす力について解説する。
コミュニケーションの質は「話し方」だけでは決まらない
今、私は企業の社員の方々に向けた、社外人材によるオンライン1on1サービスを通して組織変革のお手伝いをしています。話を「聴いてもらう」体験をする人が増えていくと、その人も組織も変わっていくのです。今回は「聴く」こと、「聴き合う」ことによって、組織に何が起こるのかということを、少しお伝えしてみたいと思います。
コミュニケーションというのは「聴くこと」、つまりじっくりと相手の話を受け止めることと「話すこと」とで成立します。しかし私たちは「コミュニケーションをもっとうまく取りたい」「コミュニケーションをもっと良くしたい」というときに、しばしば話す方のことばかり考えていないでしょうか。
一歩引いて見ると、聴く方も含めてのコミュニケーションです。つまりコミュニケーションが良くなるポテンシャルは、聴く方にもあるのです。
読者の方々も、何かを話そうと思ったときに、相手の態度があまりにも冷たくて、言おうと思っていたことが分からなくなって頭が真っ白になったり、混乱してしまってしどろもどろになったりした経験を、きっとお持ちのはずです。